俳句
新折々のうた5 (岩波新書) 作者:大岡 信 岩波書店 Amazon ひどい目にあひたりしかど年経つつその恩恵を思ふことあり 佐藤志満 こういう歌に出会うことができただけでも、この本を読んでよかったと思う。歌に励まされるということはあるのだ。 俳句では、 縄…
僕には、俳句を評する文章の中にしばしば出てくる「説明的」という言葉が難しく感じられる。 俳句作品においては「説明的」であることは嫌われる。最近読んだ『俳句劇的添削術』の中でも、「説明的」である部分は必ず添削の対象となる。 俳句劇的添削術 (角…
俳句講座 季語と定型を極める 作者:岸本 尚毅 草思社 Amazon 『俳句講座 季語と定型を極める』には岸本尚毅らしさが横溢している。 「まずは形を作っていくことが、句作の基本」であると説く筆者は、「上五・中七+下五(季語)」または「上五(季語)+中七…
大岡信の『第十折々のうた』読了。 第十 折々のうた (岩波新書) 作者:大岡 信 岩波書店 Amazon 寒菊や縫ひつつおとす針の錆 加藤知世子 の解説中、大岡信は「『縫ひつつおとす針の錆』の具象性が鮮明なので、暗示力も強くなる。」と述べている。 「具象」の…
自分好みの現代俳句(正岡子規以降)をストックするエクセルファイルを作ってあって、これはと思う俳句を見つけると、作者名、句、季語などを打ち込んでおくようにしている。20年以上も続けている割には、採録句数はまだ少なく、現在1,200句ほど。 最近読み…
平井照敏『俳句 沈黙の塔』を読んだ。(実は読んだのは2か月ほど前。いろいろあって、ブログが後回しになってしまった。) 昭和49年発行だから、半世紀近く前の本だが、古びた感じがしない。筆者は俳句を芸事として始めたのではない。俳句を言葉の遊びとも…
大岡信は『第八折々のうた』で、阿部青鞋の むづかしき顔してあるく暑さかな を取り上げ、阿部青鞋には「砂浜が次郎次郎と呼ばれけり」「虹自身時間はありと思ひけり」など「ふしぎな感覚」の句が多いと紹介したあと、 それらに対して右の句は、これまた徹底…
千葉雅也『勉強の哲学―来るべきバカのために』(文春文庫)を面白く読んだ。 勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫) 作者:千葉 雅也 文藝春秋 Amazon 『センスの哲学』との偶然の出会いは、僕にとって幸運な出会いだったと言えそうだ。これに…
黒岩徳将、第一句集『渦』。街句会でお会いしたときに、句集を出しましたと差し出され、即、購入。後日、サインをもらう予定✌('ω'✌ ) 句集 渦 作者:黒岩徳将 港の人 Amazon 青島麦酒喧嘩しながら皿仕舞ふ 中国人同士の威勢の良い会話は、しばしば口喧嘩をし…
自分の俳句をどういう言葉で褒められるのが嬉しいか。 「巧い」と言われるのは嬉しいけれども、最上級の褒め言葉ではない。「…けれども、技巧が鼻に付く」とか、「…けれども、まとまり過ぎている」「…けれども既視感あり」などと否定的な言葉があとに続きそ…
朝日新聞の書評欄にで知って読み始めたが、勝手に想像していたよりもずっと中身の濃い、読み応えのあるエッセイ集だった。 いつかたこぶねになる日 作者:小津夜景 素粒社 Amazon 好きな俳句はと聞かれたら、 夏草に汽罐車の車輪来て止まる とか、 梅咲いて庭…
俳句の秘法 (角川選書) 作者:鷹羽 狩行 KADOKAWA Amazon 「類想をおそれるな」の章で、筆者は「類想」を「類句」とは別物として、次のように述べている。 「春はものの始まり、夏はものの盛り、秋は滅びへと向かい、冬は死の世界」という共通の認識が個々の…
俳句のルール 笠間書院 Amazon 世界の人が俳句に憧れ、「私も母国語で俳句を書きます」と我々に微笑みかけてくれるその時に、こちらから、外国語の「ハイク」は日本の「俳句」とは違うものですよといって差異を強調すべきなのでしょうか。日本と世界の俳句に…
俳句は入門できる (朝日新書) 作者:長嶋 有 朝日新聞出版 Amazon 筆者は、俳句結社には所属せず、つまり名の通った俳人を師とするわけでもなく、新聞の俳句欄や総合誌に熱心に投句を続ける人でもない。本書の第1章には「俳句は一人でできる」とある。では、…
誤植に戸惑うことが続いた。 『NHK俳句』の最新号の記事中に、次の句が紹介されていた。 さなぎだに湖尻はさびし時鳥草 上田五千石 さなぎ(蛹)でさえ寂しいって、どういうこと?? よくわからない… ところが、次のページにこの句の解説があり、謎は氷解。…
本書で扱われている88人の現代俳人というのは、いずれも現代を代表する俳人たちなのだろうが、僕にとっては未知の俳人も含まれる。海藤抱壺、岸風三樓、ジャック・スタム、これらの名前はこの本で初めてお目にかかったように思う。 引用されている1,800句の…
今井聖の句集『九月の明るい坂』をアマゾンで取り寄せて読んだ。 九月の明るい坂―句集 作者:今井 聖 朔出版 Amazon 捕虫網立てて水深測りけり 海に出る運動会を二つ見て 皆で呼ぶ雪の校庭にゐるひとり 予選からゐる前列の白日傘 あと一人来ず麦秋の駅の前 「…
昨年12月、鵠沼の湘南西脇画廊に山本容子銅版画展を観に行った。 俳句と絵をコラボさせた句集『山猫画句帖』の原画も展示されているというので、それを楽しみに。山本容子が面白い句を作っているのを知っていたから。 会場では、もし一枚買って帰るとしたら…
図書館で借りて返すまでの2週間というのは、あっという間に過ぎてしまう。毎回のことだが、今回も期限ぎりぎりの返却になってしまった。 借りたのは、次の4冊、いずれも句集。 今井聖『北限』 同『谷間の家具』 茨木和夫『みなみ』 高柳克弘『寒林』 返し…
昨年9月に新しく開館した神奈川県立図書館に初めて行ってみた。 読むのは書架で見つけた小川軽舟の句集『朝晩』とすぐ決まる。さて、これをどこで読もう。館内に閲覧用のスペースはたくさんあって、どこに座ろうかとうろうろしたが、今日は、3階の、港方面…
穂村弘の『短歌の友人』を読んだ。 短歌の友人 (河出文庫) 作者:穂村弘 河出書房新社 Amazon くだもの屋の台はかすかにかたむけり旅のゆうべの懶きときを 吉川宏志 について、筆者は次のように言う。 「かたむけり」が一首にリアリティを与えている。現実に…
夏みかん酢つぱしいまさら純潔など 作者:鈴木 しづ子 河出書房新社 Amazon いにしへのてぶりの屠蘇をくみにけり うすら日の字がほつてある冬の幹 時差通勤ホームの上の朝の月 わが頬にゑくぼさづかり春隣 みなそこにひまなくならぶ月夜の石 木枯しや坐せば双…
角川俳句コレクション 読む力 作者:井上 弘美 KADOKAWA Amazon 井上弘美の『読む力』。全編を通じて筆者の読みの深さ、鋭さに圧倒される。また、随所に作句上の要諦も示される。なるほどと思ったもののうちのいくつかを、要約して挙げてみる。 鳥の声梢をと…
未来図は直線多し早稲の花 鍵和田秞子 未来の都市生活においては、何よりも効率やスピードが優先される。そのため街のつくりは直線的であることが望ましい。建物や道路の設計図には定規で引いたような直線が多用される。それは硬質で透明感のある一種の美し…
俳句の誕生 (単行本) 作者:櫂, 長谷川 筑摩書房 Amazon 今回は、各章ごとに要旨をかいつまんでまとめてみた。ところが、最終章の最後の一文がそれ以前の内容とうまくつながらない。そもそも、「詩はどこに生まれるか」というのが当初の問題意識だったと思わ…
今、現代文の授業で、野矢茂樹の「言語が見せる世界」という評論を読んでいるのだが、ここで説かれていることの多くが、俳句についての言説と重なってくることに気づいた。「言語が見せる世界」の中にはキーワードの一つとして、「プロトタイプ」という言葉…
嬉しい郵便物が届いた。松野苑子さんの3冊目の句集『遠き船』。 句集 遠き船 作者:松野 苑子 KADOKAWA Amazon いつものように、まず最初は、とにかく最後まで読み通す。次は、好きな句、気になる句に丸印をつけながらもう一度最初から読む。(句集を読んで…
夏井いつき『句集 伊月集 梟』を読んだ。作者四十代の作品を集めたという第二句集。「ふくろうに聞け快楽のことならば」で始まり、「木枯を百年聞いてきた梟」で終わる。 句集 伊月集 梟 作者:夏井いつき 朝日出版社 Amazon 龍の玉こつんとほんとのことを知…
1ランクアップのための俳句特訓塾 作者:こぼ, ひらの 草思社 Amazon これは「二冊目の俳句入門書」という位置づけとのことだが、僕にとっては何十冊目の俳句入門書だろう? 読んでばかりで詠まないから、いつまでも「入門」どまりで上達しないのだ。でも、僕…
久しぶりに内田百閒を読んだ。 どの文章からも百閒随筆の魅力がにじみ出てくる。「寄贈本」「署名本」を読むと、自分の著書を人に贈るのも簡単な話ではないことがわかる。受け取る側にもいろいろな人間がいるのだ。寄贈本の金額もばかにならないようだ。 私…