俳句

早稲の花

未来図は直線多し早稲の花 鍵和田秞子 未来の都市生活においては、何よりも効率やスピードが優先される。そのため街のつくりは直線的であることが望ましい。建物や道路の設計図には定規で引いたような直線が多用される。それは硬質で透明感のある一種の美し…

筆者の問題意識はどこに?

俳句の誕生 (単行本) 作者:櫂, 長谷川 筑摩書房 Amazon 今回は、各章ごとに要旨をかいつまんでまとめてみた。ところが、最終章の最後の一文がそれ以前の内容とうまくつながらない。そもそも、「詩はどこに生まれるか」というのが頭書の問題意識だったと思わ…

現実の実在性に届く眼

今、現代文の授業で、野矢茂樹の「言語が見せる世界」という評論を読んでいるのだが、ここで説かれていることの多くが、俳句についての言説と重なってくることに気づいた。「言語が見せる世界」の中にはキーワードの一つとして、「プロトタイプ」という言葉…

草の味

嬉しい郵便物が届いた。松野苑子さんの3冊目の句集『遠き船』。 句集 遠き船 作者:松野 苑子 KADOKAWA Amazon いつものように、まず最初は、とにかく最後まで読み通す。次は、好きな句、気になる句に丸印をつけながらもう一度最初から読む。(句集を読んで…

いつまでたっても「入門」どまり

1ランクアップのための俳句特訓塾 作者:こぼ, ひらの 草思社 Amazon これは「二冊目の俳句入門書」という位置づけとのことだが、僕にとっては何十冊目の俳句入門書だろう? 読んでばかりで詠まないから、いつまでも「入門」どまりで上達しないのだ。でも、僕…

署名本の話

久しぶりに内田百閒を読んだ。 どの文章からも百閒随筆の魅力がにじみ出てくる。「寄贈本」「署名本」を読むと、自分の著書を人に贈るのも簡単な話ではないことがわかる。受け取る側にもいろいろな人間がいるのだ。寄贈本の金額もばかにならないようだ。 私…

「ブルータス」がきっかけで、木山捷平を読む。

『ブルータス』という雑誌は面白い。ときどきは買うこともあるし、バックナンバーを図書館で閲覧したり、借りたりすることもある。今回借りて来た3冊の中の1冊が村上春樹の特集。 BRUTUS(ブルータス) 2021年 10月15日号 No.948 [特集 村上春樹 上 「読む。…

向いている人、いない人

フルーツポンチ村上健志の俳句修行 作者:村上健志 春陽堂書店 Amazon 巻末の「特別対談」より 村上 俵さんの《発芽したアボガド土に植える午後 したかったことの一つと思う》も本当に軽やかで、現実を楽しむことを上手にさせてくれる歌だなと思うんです。俵 …

俳句の新しさと伝統

高柳克弘『究極の俳句』を読んだ。 究極の俳句 (中公選書 118) 作者:髙柳 克弘 中央公論新社 Amazon 終章から言葉を拾って、著者の俳句観をざっとまとめてみると、以下のようになる。 「伝統と前衛とを止揚したところに芭蕉の真価があった。」俳諧は「生粋の…

人生と哲学

『新折々のうた8』を読んだ。 新折々のうた (8) (岩波新書 新赤版 (983)) 作者:大岡 信 発売日: 2005/11/18 メディア: 新書 『折々のうた』所載の作品は、おそらく短歌と俳句で9割程度を占めていて、短歌と俳句の割合はほぼ半々という印象。特に今回は短歌…

風船とおしゃべり

前回、「二人して交互に一つの風船に息を吹き込むようなおしゃべり(千葉聡)」という短歌を取りあげた。卓抜な比喩を用いた秀句だと思う。なんだか幸せな気分にさせられる。 風船と、おしゃべり… 今日の「朝日俳壇」には、こんな句が載っていた。(高山れお…

草野早苗句集『ぱららん』

またまた魅力的な句集をいただいた。冒頭の一句に戸惑う年の暮れ。その句、 穴すべてブラシで磨く春の朝 何の「穴」か、なぞ。「穴すべて」とあるから、穴はたくさんある。その穴の一つ一つにブラシを差し込んで丁寧に磨く。久しぶりにきれいに磨かれた、穴…

背泳ぎの空

中谷豊句集『火焔樹』を読んで印象に残った句の一つが、 背泳ぎの空に未来を見し日かな だ。この句を読んで、僕はすぐに石田響子の 背泳ぎの空のだんだんおそろしく を思い出した。背泳ぎをしながら見た空におそろしさを感じることと、未来を見ることの間に…

「創造」としての「鑑賞」

現代秀句 作者:正木 ゆう子 発売日: 2020/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) 帯に「鑑賞、すなわち創造」とあるが、文学作品の鑑賞、とりわけ俳句の場合は読者に「創造」力が求められる。たとえば、橋閒石の句、 柩出るとき風景に橋かかる の場合。筆…

詩人、蕪村

萩原朔太郎の「郷愁の詩人 与謝蕪村」を読んだ。これは詩人による俳句論としてなかなか面白い。また、朔太郎が自らの詩において何を追い求めたのかを探る手がかりともなる。 今や蕪村の俳句は、改めてまた鑑賞され、新しくまた再批判されねばならない。僕の…

脳生理学者の芭蕉論

「奥の細道」の知恵 (講談社文庫) 作者:品川 嘉也 メディア: 文庫 おそらく古本屋の店先の100円均一のワゴンの中にあるのを見つけて買ったのだろう、ずいぶん前から本棚にあって、そのままにしていたのを読み始めてみたら、これが意外と面白い。 筆者が言い…

見える色、見えない色

伊勢佐木町の古書店、馬燈書房で佐藤文香の句集『海藻標本』を見つけて購入。冒頭の、 少女みな紺の水着を絞りけり はいろいろと取り上げられていて知っていたし、生徒に紹介もした。(9年ほど前の記事にこんなことを書いてます。http://mf-fagott.hatenabl…

絵の授業を俳句の授業のつもりで聴く

『千住博の美術の授業 絵を描く悦び』(光文社新書)を読んだ。 千住博の美術の授業 絵を描く悦び (光文社新書) 作者:千住 博 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/06/27 メディア: Kindle版 絵を描く人への教えは、あらゆる表現活動に当てはまるに違いな…

「奥の細道」は若者だけが難しいと感じるのか

堀切実「『おくのほそ道』をよむ」(岩波ブックレット)を読んだ。 『おくのほそ道』をよむ (岩波ブックレット―クラシックスと現代) 作者:堀切 実 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1993/02/22 メディア: 単行本 大学の国文科3年生に対するアンケート調査…

夏井いつきを読む

仕事帰り、図書館に寄って、夏井いつき『句集 伊月集 龍』を読んだ。 遺失物係の窓のヒヤシンス しつかりと握つたはずの初蛍 たむろして金魚のよしあしを論ず そこにまだありをととひの鵙の贄 台本になく咳き込んでをりにけり 善玉のはうの狐火つれてくる 考…

やるしかない状況に自分を追い込む

『日曜俳句入門』(吉竹純著、岩波新書)は、俳句の作り方ではなくて、新聞俳壇などへの投句を楽しむコツを教えてくれる本。 日曜俳句入門 (岩波新書) 作者:吉竹 純 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/10/31 メディア: 新書 僕は新聞の俳句欄に投句す…

俳句を口語訳すること

名句の所以 近現代俳句をじっくり読む (澤俳句叢書) 作者:小澤 實 出版社/メーカー: 毎日新聞出版 発売日: 2018/09/14 メディア: 単行本 小澤實は『名句の所以』で取り上げたすべての句について口語訳を附している。 たとえば橋閒石の「三枚におろされている…

俳句総合誌に初めて投句したときのこと

ずいぶん前から、何かきっかけがあれば書こうと思っていたのだが… 僕が初めて俳句の総合誌に投句したのは2002年の秋。その当時刊行されていた「俳句朝日」という雑誌だ。その句は、 台風の目を棒で刺す予報官 というのである。ご存知の方も多いと思うが、中…

目の前にあるのは

池澤夏樹個人編集による『日本文学全集』の第29巻は、「近現代詩歌」。その中の俳句を拾い読みしている。俳句の選者は小澤實。明治、大正、昭和の俳人50人を選び、その代表句を5句選んで口語訳と解説を加えている。 この解説は文字数約180、大岡信の『折々…

賑やかな葬列

素敵な句集をご紹介します。街同人の長岡悦子さんの『喝采の膝』。 喝采の膝 作者: 長岡悦子,経真珠美 出版社/メーカー: 金雀枝舎 発売日: 2019/09/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 空港出て揚雲雀目に痛きまで 飛行機の旅では、我々はしば…

じわっと効き目?

倉阪鬼一郎『元気が出る俳句』読了。 元気が出る俳句 (幻冬舎新書) 作者: 倉阪鬼一郎 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/03/28 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る サプリメントの効用が信じられないのと同じで、飲んで(読んで)すぐ効…

詩の中の算術

俳句の中に「こうだから、こうだ」という因果関係を持ち込むことは、避けるべきだとされる。うっかりそういう句を作ってしまうと、「説明」だとか「理屈」だとか言われて、批判されるのが落ちだ。 詩についても、同じことが言えるのだということを、三好達治…

掘り出し物

俳人、石川桂郎の名前は知っていた。気に入った句を書き溜めてあるファイルの中に、 釣堀がこんなところに雨の旗 が見つかった。平井照敏編の『現代の俳句』の中にも取り上げられている俳人だ。この人が小説家として優れた作品を残していることは、『名短編…

はるもにあ合同句集

先週の釘ん句会には、「はるもにあ」所属で、3年ほど前に句集『風を孕め』を上梓された山口蜜柑さんが特別参加してくださいました。その山口さんにいただいた「十周年記念、はるもにあ合同句集」を読むのがこの一週間の通勤電車の中の楽しみでした。お気に…

句集を持って公園へ

今日のように気持ちよく晴れた休日になると、外で陽を浴びながら体を動かしたいという気持ちが押さえきれませんが、一方では家でのんびりコーヒーを飲みながら読書を楽しみたいという思いもあり、このアンビバレンツ(?)な欲望を二つながらかなえるには、…