俳句

脳生理学者の芭蕉論

「奥の細道」の知恵 (講談社文庫) 作者:品川 嘉也 メディア: 文庫 おそらく古本屋の店先の100円均一のワゴンの中にあるのを見つけて買ったのだろう、ずいぶん前から本棚にあって、そのままにしていたのを読み始めてみたら、これが意外と面白い。 筆者が言い…

見える色、見えない色

伊勢佐木町の古書店、馬燈書房で佐藤文香の句集『海藻標本』を見つけて購入。冒頭の、 少女みな紺の水着を絞りけり はいろいろと取り上げられていて知っていたし、生徒に紹介もした。(9年ほど前の記事にこんなことを書いてます。http://mf-fagott.hatenabl…

絵の授業を俳句の授業のつもりで聴く

『千住博の美術の授業 絵を描く悦び』(光文社新書)を読んだ。 千住博の美術の授業 絵を描く悦び (光文社新書) 作者:千住 博 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/06/27 メディア: Kindle版 絵を描く人への教えは、あらゆる表現活動に当てはまるに違いな…

「奥の細道」は若者だけが難しいと感じるのか

堀切実「『おくのほそ道』をよむ」(岩波ブックレット)を読んだ。 『おくのほそ道』をよむ (岩波ブックレット―クラシックスと現代) 作者:堀切 実 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1993/02/22 メディア: 単行本 大学の国文科3年生に対するアンケート調査…

夏井いつきを読む

仕事帰り、図書館に寄って、夏井いつき『句集 伊月集 龍』を読んだ。 遺失物係の窓のヒヤシンス しつかりと握つたはずの初蛍 たむろして金魚のよしあしを論ず そこにまだありをととひの鵙の贄 台本になく咳き込んでをりにけり 善玉のはうの狐火つれてくる 考…

やるしかない状況に自分を追い込む

『日曜俳句入門』(吉竹純著、岩波新書)は、俳句の作り方ではなくて、新聞俳壇などへの投句を楽しむコツを教えてくれる本。 日曜俳句入門 (岩波新書) 作者:吉竹 純 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/10/31 メディア: 新書 僕は新聞の俳句欄に投句す…

俳句を口語訳すること

名句の所以 近現代俳句をじっくり読む (澤俳句叢書) 作者:小澤 實 出版社/メーカー: 毎日新聞出版 発売日: 2018/09/14 メディア: 単行本 小澤實は『名句の所以』で取り上げたすべての句について口語訳を附している。 たとえば橋閒石の「三枚におろされている…

俳句総合誌に初めて投句したときのこと

ずいぶん前から、何かきっかけがあれば書こうと思っていたのだが… 僕が初めて俳句の総合誌に投句したのは2002年の秋。その当時刊行されていた「俳句朝日」という雑誌だ。その句は、 台風の目を棒で刺す予報官 というのである。ご存知の方も多いと思うが、中…

目の前にあるのは

池澤夏樹個人編集による『日本文学全集』の第29巻は、「近現代詩歌」。その中の俳句を拾い読みしている。俳句の選者は小澤實。明治、大正、昭和の俳人50人を選び、その代表句を5句選んで口語訳と解説を加えている。 この解説は文字数約180、大岡信の『折々…

賑やかな葬列

素敵な句集をご紹介します。街同人の長岡悦子さんの『喝采の膝』。 喝采の膝 作者: 長岡悦子,経真珠美 出版社/メーカー: 金雀枝舎 発売日: 2019/09/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 空港出て揚雲雀目に痛きまで 飛行機の旅では、我々はしば…

じわっと効き目?

倉阪鬼一郎『元気が出る俳句』読了。 元気が出る俳句 (幻冬舎新書) 作者: 倉阪鬼一郎 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/03/28 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る サプリメントの効用が信じられないのと同じで、飲んで(読んで)すぐ効…

詩の中の算術

俳句の中に「こうだから、こうだ」という因果関係を持ち込むことは、避けるべきだとされる。うっかりそういう句を作ってしまうと、「説明」だとか「理屈」だとか言われて、批判されるのが落ちだ。 詩についても、同じことが言えるのだということを、三好達治…

掘り出し物

俳人、石川桂郎の名前は知っていた。気に入った句を書き溜めてあるファイルの中に、 釣堀がこんなところに雨の旗 が見つかった。平井照敏編の『現代の俳句』の中にも取り上げられている俳人だ。この人が小説家として優れた作品を残していることは、『名短編…

はるもにあ合同句集

先週の釘ん句会には、「はるもにあ」所属で、3年ほど前に句集『風を孕め』を上梓された山口蜜柑さんが特別参加してくださいました。その山口さんにいただいた「十周年記念、はるもにあ合同句集」を読むのがこの一週間の通勤電車の中の楽しみでした。お気に…

句集を持って公園へ

今日のように気持ちよく晴れた休日になると、外で陽を浴びながら体を動かしたいという気持ちが押さえきれませんが、一方では家でのんびりコーヒーを飲みながら読書を楽しみたいという思いもあり、このアンビバレンツ(?)な欲望を二つながらかなえるには、…

定価は1500円(税別)

神保町の岩波ホールで映画『12か月の未来図』を見た日、ついでに古本屋街を冷かして歩いていたところ、山吹書房の店先のワゴン内に潜伏していた『坊城俊樹句集』を発見、300円にて捕獲。 一本の棒は蝮となり死ねり どの顎も鮭の顎して遡る 日銀の壁に凭れて…

教科書にいかが?

白楽駅近くの古本屋「Tweed Books」にて300円で購入した、アーサー・ビナード『空からきた魚』(集英社文庫)を読んだ。 空からきた魚 (集英社文庫) 作者: アーサー・ビナード 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2008/02/20 メディア: 文庫 クリック: 24回 こ…

扇のかなめ

寺田寅彦を読みたくなったときは、『寺田寅彦随筆集』(岩波文庫)の目次のページを開いて、面白そうだと思ったタイトルの文章を拾い読みする。俳句関係の文章はだいたい読んだつもりだったが、今日読んだ「夏目漱石先生の追憶」と題された文章の中に、こん…

楸邨の句がわかる

言葉となればもう古し―加藤楸邨論 作者: 今井聖 出版社/メーカー: 朔出版 発売日: 2017/11/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『言葉となればもう古し』は、「街」などの俳誌、および俳句総合誌に掲載された今井聖の文章のうち、加藤楸邨に関…

「なると気分」

小説は君のためにある (ちくまプリマー新書) 作者: 藤谷治 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/09/06 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 『小説は君のためにある』の中に、「文学」と呼べる文章と呼べない文章の違いについて説明した、…

骨太な句

大氷柱作者: 梅元あき子,経真珠美出版社/メーカー: 金雀枝舎発売日: 2018/08/30メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「街」同人の梅元あき子さんから句集『大氷柱』(金雀枝舎発行)を送っていただいた。測量の太杭芒に捻り込む 大氷柱トレーニングメ…

飢ゑし啼く海猫に日増しの北風嵐

礼文島の岬巡りコースというハイキングコースは、北の端のスコトン岬から始まる。強い風に抗うように歩き始めて30分ほどの見晴らしの良い丘の上に、上村占魚の句碑がある。「海猫」は「ごめ」、「北風嵐」は「きたあらし」と振り仮名がふってある。 「米の…

プールの匂い

教室にプールの水の匂ひ来る 茨木和生 プールを詠んだ名句はいくつもありますが、これはその中でも好きな句の一つです。 今年度は、現代文の授業で毎時間、俳句を一句ずつ黒板に書いて紹介しています。そして、今日の一句がこの句でした。 水泳の授業のはじ…

「長谷川利行展」のち「釘ん句会」

昨年の今頃、東京近代美術館で観た長谷川利行が良かったという話はこのブログに書いたが、その長谷川利行の展覧会があると知り、プーシキンやルーブルも観たいけどまずこっちが先、と思って昨日行ってきた。 初めて行く会場の府中市美術館は、爽やかに晴れ上…

分け入っても分け入っても…

種田山頭火―漂泊の俳人 (講談社現代新書 363)作者: 金子兜太出版社/メーカー: 講談社発売日: 1974/01/01メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る 金子兜太の『種田山頭火―漂泊の俳人』(講談社現代新書)を読んだ。 山頭火と言えば、世間では人気の…

どうなる? 朝日俳壇

金子兜太が亡くなってひと月たった。朝日俳壇の選者はどうなるのだろうか。毎週丁寧に目を通していたわけではないが、兜太の選は気になっていた。兜太選のない朝日俳壇は、寂しい。悩むことはない作者: 金子 兜太出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/04/2…

文豪と閨秀作家

硝子戸の中 (新潮文庫)作者: 夏目漱石出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1952/07/22メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (35件) を見る 「人格者」、「大人」というイメージの夏目漱石だが、こんなエピソードを読むと、漱石ほどの人で…

俳句をめぐる静かな思索

橋本鶏二の『俳句実作者の言葉』をほぼ読み終えた。 Amazonで検索しても一件もヒットせず、ググってもあまり出てこないところをみると、出先でたまたま立ち寄った古書店で見つけて購入できたのはラッキーだったのかもしれない。静謐で端正な文章から、俳句に…

驚くのがうまい人

俳句の図書室 (角川文庫)作者: 堀本裕樹出版社/メーカー: KADOKAWA発売日: 2017/04/25メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る巻末の著者と又吉直樹の対談に勝手に加わって、鼎談にしてしまう。***************又吉 俳句作る人って…

広島と長崎を区切る線

原爆忌はいつも夏の最も暑い時期にやってくる。だから当然夏の季語のように感じていた。アーサー・ビナードの次のエッセイを読むまでは。 原子爆弾の季節感について、細かく考えたことはなかった。だが、数年前、知人と俳句の話になり、彼は「陰暦で季節を区…