嬉しい郵便物が届いた。松野苑子さんの3冊目の句集『遠き船』。
いつものように、まず最初は、とにかく最後まで読み通す。次は、好きな句、気になる句に丸印をつけながらもう一度最初から読む。(句集を読んでいて楽しいのはいつもこの時だ。)今回印がついたのは約20句。最終的にはベスト10句を選ぶというのがルールなので(誰が決めたんだ?)、半分に絞るべく、拾い出した句を何度も読み返す。その時、僕はどういう基準で取捨選択しているのだろう。厳選10句を眺めながら、後付けの選択基準を考えてみる。
「僕自身が今まで見逃していた、つまりこれまで僕の周りに存在したことのあるはずのありふれた物事の中から、小さな「詩」を見つけ出して閉じ込めている、言葉の結晶」
というわけで、選んだのが次の10句。
蚊を打てば聖書の中の一文字に
紙雛のなかなか立たぬ一つかな
摘草のときどき横の姉を見て
真つ向に富士や西瓜は立つて食ふ
笹鳴や如雨露の中の昨夜の雨
オルガンの煙のやうな音長閑
草笛に草の味してまだ鳴らず
鼻先を感じて湯ざめ始まれり
接写してパンジーだんだん怖くなる
蟻の巣の穴の奥まで空気かな
特選を一句だけ選ぶとしたら、「草笛に…」か「鼻先を…」か、迷う。それにしても(こういうことは珍しいのだけれど)、句集の帯にある作者による「自選十句」と、僕が選んだ句は、一句も重なっていない。本当にこの句集を鑑賞できるようになるには、僕自身がもっと修業を重ねないといけないんだろうな。