木の家、石の墓

昨年9月に新しく開館した神奈川県立図書館に初めて行ってみた。

読むのは書架で見つけた小川軽舟の句集『朝晩』とすぐ決まる。さて、これをどこで読もう。館内に閲覧用のスペースはたくさんあって、どこに座ろうかとうろうろしたが、今日は、3階の、港方面の眺めがよくて、座り心地の良さそうなソファの並ぶリーディングラウンジに落ち着く。

一度通読して、二度目には好きな句を手帳に書きとりながら読んだら、一時間以上時間が経っていた。手帳にはちょうど10句並んだ。

  梅雨の日々ジャージでゆるく暮らしたく

  梅咲いてユニクロで買ふもの軽し

小川軽舟は、この「ゆる」さ、「軽」さがいい。といっても、もちろんゆるくて軽いばかりではない。

  若者の貧しさ眩し更衣

  ひぐらしや木の家に死に石の墓

筆者は「木の家に住み」も考えた、かどうかはわからないが、僕だったら「住み」としてしまいそう。「木の家に死に」でかえって、そこに生きていた日々の重さに思いが至る。

  寒晴や海におどろく町の川

  おるがんは雲踏むごとし春惜しむ

擬人法、比喩がイメージを生き生きと伝える。「おどろく」「おるがん」のひらがな表記にも納得。