随筆

古本屋で見つけた『小さな手袋』を読み始めたけど、思い出した! (←AIタイトルアシストを試してみた)

伊勢佐木町の古本屋で小沼丹のエッセイ集『小さな手袋』を見つけて、さっそく帰りの電車の中で読み始めたのだが、ふと思い出した。(小沼丹の短編集で読みかけのがあったのではないか…それなら、まずそれを読み終えてしまわねば…)帰宅して机の周辺を捜索す…

漢詩は自由詩

朝日新聞の書評欄にで知って読み始めたが、勝手に想像していたよりもずっと中身の濃い、読み応えのあるエッセイ集だった。 いつかたこぶねになる日 作者:小津夜景 素粒社 Amazon 好きな俳句はと聞かれたら、 夏草に汽罐車の車輪来て止まる とか、 梅咲いて庭…

洲之内徹と「アルプ」

洲之内徹の『気まぐれ美術館』読了。 最後に収められている「くるきち物語」と題された文章の中に、 私は二年ほど前から「アルプ」という山の雑誌に、毎号短い文章を書いている。 とあるのを読んで、おや? と思った。というのは、洲之内徹は山登りとは縁が…

二人の「僕」

家から逃げ出すとき、自分以外のなにから逃げるというのか。さらば、と野生の若者が家好きの若者に告げた。 フォンターネ 山小屋の生活 (新潮クレスト・ブックス) 作者:パオロ・コニェッティ 新潮社 Amazon 孤独を求めて標高2,000メートル近い山の中に小屋を…

コーヒーから珈琲へ

僕は珈琲 作者:片岡 義男 光文社 Amazon 前作『珈琲が呼ぶ』は本文中ではすべて「コーヒー」という片仮名表記で統一されていたが、今度の『僕は珈琲』では「珈琲」でほぼ統一されている。 珈琲、の漢字ふたつは、凛々しい。かつての僕はコーヒーと片仮名書き…

自分から遠くなる

随筆 八十八 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) 作者:中川 一政 講談社 Amazon 伊勢佐木町の古本屋で、中川一政の『随筆八十八』を見つけて購入。 前の持ち主の引いた線が残っている。たとえばこんな箇所。 威張ったって駄目だ。見る人が見ればみな見え透…

石蕗の花

どういう順番だったか正確には覚えていないが、今までに読んだ内田百閒を挙げると、 『阿房列車』 『百鬼園随筆』 『続百鬼園随筆』 『冥途・旅順入場式』 『凸凹道』 『有頂天』 今回の『つはぶきの花』で7冊目ということになる。 つはぶきの花 (旺文社文…

撓む本棚

ほんもの: 白洲次郎のことなど (新潮文庫) 作者:正子, 白洲 新潮社 Amazon 勤め始めて間もなくの頃(だいぶ昔だなあ…)、何が話題になっていたのか忘れたけれど、国語科の先輩教員が、「白洲正子は文学がわかっていない」というような意味のことを言ったのが…

文は人なり

須之内徹の『絵の中の散歩』はエッセイを読むことの面白さを満喫させれてくれる。 画廊の仕事の内側、画商から見た画家の素顔、一枚の絵のたどる運命…味のある文章が興味深い様々な世界を見せてくれる。日本人の洋画家の作品に対する親しみが増す。ちょっと…

署名本の話

久しぶりに内田百閒を読んだ。 どの文章からも百閒随筆の魅力がにじみ出てくる。「寄贈本」「署名本」を読むと、自分の著書を人に贈るのも簡単な話ではないことがわかる。受け取る側にもいろいろな人間がいるのだ。寄贈本の金額もばかにならないようだ。 私…

評論? 随筆?

日本近代随筆選1 出会いの時 (岩波文庫) 岩波書店 Amazon 編者(千葉俊二)による「解説」にもあるように、「随筆とはいかなる形式のもので、小説と随筆、評論と随筆はどのように違うのか」というのは難しい問題で、実際、この作品はどっちに分類したらいい…

字余りの法則

佐竹昭広著『古語雑談』を読むまで、本居宣長が発見したという「字余りの法則」というものを、僕は知らなかった。(これは国語の教師として恥ずかしいことなのかもしれないが。) 「字余りの法則」とは、字余りの句中には必ず単独の母音「あ」「い」「う」「…

山の名文家

街と山のあいだ 作者:若菜晃子 アノニマ・スタジオ Amazon 山の雑誌の編集にも携わったという著者による、山の随筆集。山を語る名文家と言えば、まず深田久弥、続いて串田孫一、辻まこと、畦地梅太郎などを思い浮かべるが、この若菜晃子もその中に加えよう。…

旅の窓

名作紀行文、『深夜特急』が生まれるまでの舞台裏と、その後日談を語り、旅の本質に迫る、興味深いエッセイ集。 ひとりバスに乗り、窓から外の風景を見ていると、さまざまな思いが脈絡なく浮かんでは消えていく。そのひとつの思いに深く入っていくと、やがて…

嘘発見器

清水町先生 (ちくま文庫) 作者:小沼 丹 発売日: 1997/06/01 メディア: 文庫 小沼丹が終生の師と慕った清水町先生、すなわち井伏鱒二の、人と作品について愛情を込めて綴った随筆集。井伏鱒二の作品理解への最良の手引きであると同時に、小沼丹の井伏譲りの軽…

「一流」を育てたものは

佐藤正午がエッセイ集『象を洗う』所収の「賭ける」の中で、こんなことを書いている。 最初の本が出版されたとき、僕はその内容を完璧に記憶していた。 最初の本というのは原稿用紙で約七百枚の長編小説なのだが、書き出しの第一行目から最後の行まで、一字…

旺文社文庫で読みたい内田百閒

内田百閒は、できれば旺文社文庫で読みたい。 僕の内田百閒との出会いは旺文社文庫の『有頂天』だったか、『阿房列車』だったか、とにかくその文章の魅力と旺文社文庫独特の質感とが僕の記憶の中では一体となってしまっている。今では新潮文庫などでも読める…

未知のミラノ、思い出の北八ツ

活字を追いながら見知らぬ土地の風景やそこで営まれる生活に思いをはせるというのも読書の一つの楽しみだけれど、活字を手がかりにかつて歩いた場所の記憶を懐かしく呼び覚ますというのもまた読書の楽しみの一つだろう。ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション…

筆跡が決め手

家にある本をうっかりまた買ってしまうことがときどきある。 今回の本はこれ。明るい旅情 (新潮文庫)作者:池澤 夏樹新潮社Amazon朝日新聞の読書欄で俳優の山崎努が紹介している文章に興味をそそられたのだけれど、最後に「現在は絶版」とある。手に入りにく…

食べるように読む

遠い朝の本たち (ちくま文庫)作者:須賀 敦子筑摩書房Amazon僕と須賀敦子とでは、血筋も、生まれ育った環境も時代も違い、読む本の傾向も(これは男か女かの違いも大きく関係しているように思いますが)ずいぶん異なります。それでも須賀敦子の少女時代から青…