早稲の花

未来図は直線多し早稲の花 鍵和田秞子 未来の都市生活においては、何よりも効率やスピードが優先される。そのため街のつくりは直線的であることが望ましい。建物や道路の設計図には定規で引いたような直線が多用される。それは硬質で透明感のある一種の美し…

涙腺崩壊?(高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ⑤)

これも勤務校の図書館報に生徒による紹介記事が載っていた本。 青い鳥(新潮文庫) 作者:重松 清 新潮社 Amazon 濁音とカ行、タ行を必ずどもってしまう、不格好な村内先生が、心を病む生徒に寄り添って大切なことを伝えることで、状況を好転させるという話を…

こんなにどきどき

古川佳子句集『カルメンの顎』 明るく快活。ダイナミックで若々しい。発想のユニークさにユーモアのセンスも加わって、人を惹きつける力がある…なんて書くと、まるで生徒の指導要録の所見欄みたいだけれど、これがこの句集から受けた印象。 駅弁の紐をひつぱ…

まあまあ、そこそこ(高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ④)

93番目のキミ 作者:山田悠介 河出書房新社 Amazon 山田悠介は初めて読む作家で、まったく知識は持ち合わせていないが、高校生には人気があるらしい。アマゾンの「商品の説明」中には「10代を中心に圧倒的な支持を得る」とある。僕が中古店で買った文芸社文…

高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ③

本を読む女 (集英社文庫) 作者:林 真理子 集英社 Amazon 林真理子が高校生に人気があるのか、実は僕はよく知らない。でも、僕がこの本を読んだのは、高校生に勧められたから、いや、正確に言えば、勤務校の図書委員会が発行している図書館報の最新号のなかに…

筆者の問題意識はどこに?

俳句の誕生 (単行本) 作者:櫂, 長谷川 筑摩書房 Amazon 今回は、各章ごとに要旨をかいつまんでまとめてみた。ところが、最終章の最後の一文がそれ以前の内容とうまくつながらない。そもそも、「詩はどこに生まれるか」というのが頭書の問題意識だったと思わ…

光源氏の「耐える能力」

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書) 作者:帚木 蓬生 朝日新聞出版 Amazon ネガティブ・ケイパビリティ(negative capability)とは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」、あるいは「性急に…

読書会という幸福

『読書会という幸福』(岩波新書)を読んだ。 読書会という幸福 (岩波新書 新赤版 1932) 作者:向井 和美 岩波書店 Amazon 著者は「あとがき」で、タイトルについて編集者から「読書会という幸福」ではアピール力が足りないのではないかという意見があったこ…

感情は何のためにあるか

アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(久山葉子訳、新潮選書) スマホ脳(新潮新書) 作者:アンデシュ・ハンセン 新潮社 Amazon 売れた本が、自分にとっても価値のある本であるとは限らない。 多くの人がスマホの画面を一日数時間眺めているとか、スマホが様々…

言葉と思考

今井むつみ『言葉と思考』(岩波新書) ことばと思考 (岩波新書) 作者:今井 むつみ 岩波書店 Amazon 本書を貫いているのは、使用言語が異なれば認識や思考の仕方も異なるのか、あるいは、言語の異なる話者同士が理解しあうことは可能なのか、という問いだ。…

現実の実在性に届く眼

今、現代文の授業で、野矢茂樹の「言語が見せる世界」という評論を読んでいるのだが、ここで説かれていることの多くが、俳句についての言説と重なってくることに気づいた。「言語が見せる世界」の中にはキーワードの一つとして、「プロトタイプ」という言葉…

生き方の多様化に向けて

本田由紀の『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)を誰かが推していたので、読んでみた。 教育は何を評価してきたのか (岩波新書) 作者:由紀, 本田 岩波書店 Amazon 著者の主張を大まかにまとめると、次のようになる。日本社会は諸外国と比べ、垂直的序…

草の味

嬉しい郵便物が届いた。松野苑子さんの3冊目の句集『遠き船』。 句集 遠き船 作者:松野 苑子 KADOKAWA Amazon いつものように、まず最初は、とにかく最後まで読み通す。次は、好きな句、気になる句に丸印をつけながらもう一度最初から読む。(句集を読んで…

現代短歌の多様性

現代秀歌 (岩波新書) 作者:永田 和宏 岩波書店 Amazon 『万葉集』なら、「素朴、おおらか、ますらをぶり」、『古今和歌集』なら、「優美、理知的、たをやめぶり」というような言葉で、その時代の作品群の歌風を言い表すことが定着しているが、「現代短歌」の…

ウクライナの平和を願って

横浜シティ・シンフォニエッタは、第40回演奏会で、チャイコフスキーの交響曲第2番を演奏します。この曲には「小ロシア」という標題が付されることが多いのですが、「ウクライナ」とも呼ばれるようです。この曲について、指揮者、金聖響は『ロマン派の交響…

スタッキング不能

スタッキング可能 (河出文庫) 作者:松田 青子 河出書房新社 Amazon 誰が主人公というわけでもなく、次々に入れ替わる登場人物たちに何か事件が起こるわけでもない。物語性というものが皆無。ただ、その登場人物たちが、世間の常識とか、「〇〇らしくあらねば…

いつまでたっても「入門」どまり

1ランクアップのための俳句特訓塾 作者:こぼ, ひらの 草思社 Amazon これは「二冊目の俳句入門書」という位置づけとのことだが、僕にとっては何十冊目の俳句入門書だろう? 読んでばかりで詠まないから、いつまでも「入門」どまりで上達しないのだ。でも、僕…

新しい国語の授業を目指して

使える!「国語」の考え方 (ちくま新書) 作者:橋本陽介 筑摩書房 Amazon 旧来型の国語(特に現代文、その中でも特に小説)の授業に対していだく生徒の不満の根本原因に迫る。そしてこれからの国語の授業のあるべき姿を示唆してくれる本。(キーワードは、「…

詩を生み出す表現

「文」とは何か~愉しい日本語文法のはなし~ (光文社新書) 作者:橋本 陽介 光文社 Amazon 橋本陽介の『「文」とは何か―愉しい日本語文法のはなし』を読むと、文法的に考えることの面白さをあらためて教えられる。僕が特に興味を持ったのは、次のようなとこ…

頭がよく見える、要約力

頭がよくなる! 要約力 (ちくま新書) 作者:齋藤孝 筑摩書房 Amazon この本では「要約」という語を、長い文章をキーセンテンスを押さえて100字とか200字とかの制限字数内にまとめる、という普通の意味にとどまらず、もっとずっと広い意味でとらえている。たと…

高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ②

チルドレン (講談社文庫) 作者:伊坂幸太郎 講談社 Amazon 高校生に好きな作家、最近読んだ作品を訊ねるとよく出てくるのが伊坂幸太郎。昨年度授業を受け持った生徒の中で特に優秀だったKさんも、好きな作家として伊坂幸太郎の名を挙げていた。というわけで…

BGMのない映画

映画、「ドライブ・マイ・カー」を観た。 コミュニケーションには、その場所の力というものが働く。食卓、車、閨房…とりわけ、この映画においては車が登場人物の台詞を引き出し、登場人物同士の会話を深めるのに大きな働きをする。原作には、主人公の家福は…

漢字の負の側面

言語学者が語る漢字文明論 (講談社学術文庫) 作者:田中 克彦 講談社 Amazon この本は、2011年に『漢字が日本語をほろぼす』という書名で、角川SSC新書の一冊として出された。それを講談社学術文庫に加えるに際して、「ちょっと過激」にひびく書名を改めたの…

同感、のち、違和感

僕の車の中には一年ほど前から、ベートーベンの弦楽四重奏曲全集(アルバン・ベルク四重奏団の7枚組)が入れっぱなしになっている。車の中ではラジオを聴くことが多いのだが(主にFM東京、たまにFM横浜)、ラジオに飽きるとCDに替える。ベートーベン…

短歌の本を生徒に薦めるとしたら、これ。

近代秀歌 (岩波新書) 作者:永田 和宏 岩波書店 Amazon 近代以降の名歌100首を選んで平易に解説した本。100首選出の基準については、「はじめに」で次のように述べている。 できるだけ私の個人的な好悪を持ちこまず、誰もが知っているような、あるいは誰もに…

どっち派?(高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ①)

高校生に人気のある住野よるの作品を初めて読んだ。 主人公のあっちーくん(安達くん)は分裂している。 クラスの大多数が向かっている方向(矢野さんへのいじめ)からずれないように(孤立しないように)、細心の注意を怠らずふるまう昼のあっちーくんと、…

非日常の読書空間

タイトルに惹かれてすぐ読み始め、機知に富んだ文章に魅了されてすぐに読み終えた。面白い! 本を快適に読む空間の確保というのは、本好きにとって重大問題なのだ。 本の読める場所を求めて 作者:阿久津隆 朝日出版社 Amazon 僕たちには本を読むための場所が…

署名本の話

久しぶりに内田百閒を読んだ。 どの文章からも百閒随筆の魅力がにじみ出てくる。「寄贈本」「署名本」を読むと、自分の著書を人に贈るのも簡単な話ではないことがわかる。受け取る側にもいろいろな人間がいるのだ。寄贈本の金額もばかにならないようだ。 私…

「の」の用法について

『続 折々のうた』読了。 続 折々のうた (岩波新書) 作者:大岡 信 岩波書店 Amazon 君や来む我や行かむのいさよひに槇の板戸も閉さず寝にけり よみ人知らず 『古今集』巻十四のこの歌について、次のような解説がある。 「……行かむの」の「の」はその上でのべ…

改革でなく、改善を。

入試改革はなぜ狂って見えるか (ちくま新書) 作者:物江潤 筑摩書房 Amazon ドラスティックな改革ではなく、既存の入試を踏襲しつつ漸進的な改善を目指す方が良いと考えます。既存の入試のくだらないところは積極的に改善し、素晴らしい点がより良くなるよう…