いにしへのてぶりの屠蘇をくみにけり
うすら日の字がほつてある冬の幹
時差通勤ホームの上の朝の月
わが頬にゑくぼさづかり春隣
みなそこにひまなくならぶ月夜の石
木枯しや坐せば双つの膝頭
この暑さ町に看板ごてごてある
炎天のポストは橋のむかふ側
僕のお気に入りの句を並べてみたら、このようになってしまった。鈴木しづ子とはこういう俳人です、という文脈の中では出て来そうもない句ばかり。これでは、巷間に伝わるような鈴木しづ子像は浮かび上がってこないだろう。でも、これらの句は、作句時の作者の心のありようをありありと伝えているのではないか、とも思う。