教育

読書会という幸福

『読書会という幸福』(岩波新書)を読んだ。 読書会という幸福 (岩波新書 新赤版 1932) 作者:向井 和美 岩波書店 Amazon 著者は「あとがき」で、タイトルについて編集者から「読書会という幸福」ではアピール力が足りないのではないかという意見があったこ…

生き方の多様化に向けて

本田由紀の『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)を誰かが推していたので、読んでみた。 教育は何を評価してきたのか (岩波新書) 作者:由紀, 本田 岩波書店 Amazon 著者の主張を大まかにまとめると、次のようになる。日本社会は諸外国と比べ、垂直的序…

新しい国語の授業を目指して

使える!「国語」の考え方 (ちくま新書) 作者:橋本陽介 筑摩書房 Amazon 旧来型の国語(特に現代文、その中でも特に小説)の授業に対していだく生徒の不満の根本原因に迫る。そしてこれからの国語の授業のあるべき姿を示唆してくれる本。(キーワードは、「…

漢字の負の側面

言語学者が語る漢字文明論 (講談社学術文庫) 作者:田中 克彦 講談社 Amazon この本は、2011年に『漢字が日本語をほろぼす』という書名で、角川SSC新書の一冊として出された。それを講談社学術文庫に加えるに際して、「ちょっと過激」にひびく書名を改めたの…

改革でなく、改善を。

入試改革はなぜ狂って見えるか (ちくま新書) 作者:物江潤 筑摩書房 Amazon ドラスティックな改革ではなく、既存の入試を踏襲しつつ漸進的な改善を目指す方が良いと考えます。既存の入試のくだらないところは積極的に改善し、素晴らしい点がより良くなるよう…

教師は…べし。

教師は落語家の話術に学ぶべし。 教師は落語家の師弟関係に学ぶべし。 教師は落語を授業のネタとして活用すべし。 落語家直伝うまい! 授業のつくりかた: 身振り手振り、間のとりかた、枕とオチ…落語は授業に使えるネタの宝庫 作者:談慶, 立川 誠文堂新光社 A…

常識を更新する

こんな本を読んだ。 学校では教えてくれない! 英文法の新常識 (NHK出版新書) 作者:鈴木 希明 発売日: 2019/02/22 メディア: Kindle版 play the piano のように、楽器を演奏することを言うときは楽器名にtheをつけるのがルールであると習ったことはしっか…

世界は、いま

今週から授業で取りあげようとしている現代文の教材「世界はいま―多文化世界の構築」は青木保の『多文化世界』(岩波新書)の序章からの抜粋だ。 多文化世界 (岩波新書) 作者:青木 保 発売日: 2003/06/21 メディア: 新書 この著作が世に出たのは2003年。それ…

情動の共有としてのコミュニケーション

大井玄の『「痴呆老人」は何を見ているか』は、読み応えのある、良書だ。もちろん、高校生にもおススメ。 「痴呆老人」は何を見ているか (新潮新書) 作者:大井 玄 発売日: 2008/01/01 メディア: 新書 今年度、授業で使う現代文の問題集に、この本の第三章「…

30年前に出会っていれば…

アクティブ・ラーニングはどのような時代の流れの中で提起されるに至ったか、今アクティブ・ラーニングを行うことの意義はどこにあるのか、アクティブ・ラーニングには具体的にどのような技法があるのか、それをどのように導入していけば良いのか… アクティ…

マークシート式問題批判

論理的に考え、書く力 (光文社新書) 作者:芳沢 光雄 発売日: 2013/11/15 メディア: 新書 教育施策については慌ただしく動いており、その点では既に消費期限切れの本であるが、まあ、それはともかく、マークシート式問題を批判した次のような部分には共鳴でき…

教えない先生

もっと若い時に読んでおくべきだったんだよな、と思いつつ… 教師 大村はま96歳の仕事 作者:大村 はま 発売日: 2003/05/29 メディア: 単行本 戦後の大きな失敗は、先生たちが教えることを遠慮するようになったことだと思います。教えるということは「詰め込み…

振り子は先に進まない?

今度は、こんな本、読んだよ。 小針誠『アクティブラーニング―学校教育の理想と現実』(講談社現代新書) アクティブラーニング 学校教育の理想と現実 (講談社現代新書) 作者:小針 誠 発売日: 2018/03/15 メディア: 新書 内容を大まかにまとめれば、前半は広…

「主語がいらない日本語」を肯定するか、否定するか

日本語は亡びない (ちくま新書) 作者:金谷 武洋 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2010/03/10 メディア: 新書 このブログの中で、僕も「主語」という言葉を何度か使ってはいる。しかし、英文法の「SVO」のような考え方を移入した現在の学校文法(橋本文…

「書く」教育の大切さ

鳥飼玖美子、苅谷夏子、苅谷剛彦『ことばの教育を問いなおす―国語・英語の現在と未来』(ちくま新書)を読んだ。 「話す」「聞く」、すなわち口頭でのコミュニケーションの力を延ばすことを重視しようとしている昨今の風潮の中にあって、「書く」ことの教育…

現代人が負わされた問い

新・建築入門―思想と歴史 (ちくま新書) 作者:隈 研吾 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1994/11 メディア: 新書 大学の入学試験の過去問をいろいろ解いてみるという授業の中で、隈研吾の『新・建築入門―思想と歴史』を出典とする問題と出会った。それは、…

記憶か思考か

橋爪大三郎の『正しい本の読み方』(講談社現代新書)を読んだ。 正しい本の読み方 (講談社現代新書) 作者:橋爪 大三郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/09/20 メディア: 新書 読んだことは、忘れてよい。本のなかみは、忘れていいことが、大部分です…

予備校の先生はどういう授業をしているのか、拝見。

これもまた、授業のために購入。 古文の勉強法をはじめからていねいに (東進ブックス 大学受験 TOSHIN COMICS) 作者: 出版社/メーカー: ナガセ 発売日: 2018/11/27 メディア: 単行本 プロの技を見せてもらって、そこから謙虚に学びたいと思ったのだが、とて…

これで『平家』を読んだ気になってはいけないが…

平家物語 マンガとあらすじでよくわかる (じっぴコンパクト新書) 作者: 出版社/メーカー: 実業之日本社 発売日: 2011/11/10 メディア: 新書 授業の準備のために購入。 長大な物語が要領よく簡潔にまとめられていて、ありがたい。『平家物語』の全体像を見渡…

緊急出版!?

こんな本が「緊急出版」されたと知って、さっそく読んでみた。 どうする? どうなる? これからの「国語」教育: 大学入学共通テストと新学習指導要領をめぐる12の提言 作者: 紅野謙介 出版社/メーカー: 幻戯書房 発売日: 2019/07/24 メディア: 単行本 この商品…

文芸誌も黙ってはいない!

文芸誌が教育の特集をしている。それはそうだろう。文科省が打ち出した大学入試改革、高校の新学習指導要領の国語に関する部分に対して、文学軽視との批判が噴出している。国語教育関係者だけでなく、ブンゲイに関わるヒトたちとしても、黙ってはいられない…

表現の連鎖の面白さ

知ってる古文の知らない魅力 (講談社現代新書) 作者: 鈴木健一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/05/19 メディア: 新書 購入: 2人 クリック: 8回 この商品を含むブログ (12件) を見る 文学作品は、過去の作品表現の集積によって成り立っている。すぐれ…

映画の限界

今日から岩波ホールで始まった、『12か月の未来図』を観てきた。 僕の知っている教育現場のリアルとはかけ離れた世界。現実の教育困難校の子供たちやその家庭はもっと複雑で難しい。映画というのは現実を単純化し、美化してしまうものらしい。興行として成り…

僕が線を消して処分する本①

本を処分しないと、置き場所がいよいよなくなってきた。 本の処分は大変だ。まず、どの本を処分し、どの本を取っておくべきか、判断が難しい。散々迷ったあげく、古本屋に出すを決断して段ボール箱に入れた本を、思い直してまた本棚に戻してしまうことも多い…

問いを見つける

『考えるとはどういうことか』(梶谷真司著、幻冬舎新書)を読んだ。 考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門 (幻冬舎新書) 作者: 梶谷真司 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2018/09/27 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る 筆…

国語の問題の問題

紅野謙介『国語教育の危機―大学入学共通テストと新学習指導要領』(ちくま新書)を読んだ。読む前から、書名を見ただけで内容が想像できてしまう。「大学入学共通テスト」について多くの大学が不安をいだいていることは、新聞でも報じられている通りだ。 htt…

論理とハラ芸

高校生のための論理思考トレーニング (ちくま新書) 作者: 横山雅彦 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2006/06/01 メディア: 新書 購入: 12人 クリック: 129回 この商品を含むブログ (54件) を見る 西洋文明と遭遇した明治の知識人は、西洋由来の抽象概念の…

受験英語は実用英語

完全独学! 無敵の英語勉強法 (ちくまプリマー新書)作者: 横山雅彦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2015/11/05メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る 大学を受け直そうというわけではないが、高校生向けに書かれた『完全独学! 無敵の英語勉強法…

能動的な読みとしての翻訳

翻訳教室―はじめの一歩 (ちくまプリマー新書)作者: 鴻巣友季子出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/07/01メディア: 新書 クリック: 5回この商品を含むブログ (13件) を見る 鴻巣友季子著、『翻訳教室―初めの一歩』を読んだ。 この本は、NHK総合テレビ…

どんな本か「予測」してみる

このブログは通常は読み終えた本(時には読みかけの本)に関して書いていますが、今回はこれから読む本(石黒圭『「予測」で読解に強くなる!』)について書きます。まだ全く中を開いていない今の段階で、こんなことが書いてあるのではないか、という「予測…