向いている人、いない人

 巻末の「特別対談」より

村上 俵さんの《発芽したアボガド土に植える午後 したかったことの一つと思う》も本当に軽やかで、現実を楽しむことを上手にさせてくれる歌だなと思うんです。
俵 アボガドは季語じゃないかもしれないけど、上の句だけだと下手な俳句になります。「したかったことの一つと思う」を入れるスペースがあるのが短歌で、そこまで言いたい人は短歌に向いていると思うし、そこまでは、って思う人は俳句に向いてるのかも(笑)。

 

今、僕の頭の中で、

ことごとく未踏なりけり冬の星     高林克弘

と、

満月や踏んだことない部屋の角     村上健志

が戦っている。なかなかいい勝負だ。もしかしたら村上の方に軍配が上がるかもしれない。そうなれば世間では「行司差し違え」とブーイングが起こるだろうか。「番狂わせ」と喝采するだろうか? この取り組みを好勝負だと真剣に面白がる人は、この本の読者に向いている人、この勝負にまるで興味のない人、格下の村上が勝てるはずがないと最初から決めてかかっている人は、この本の読者には向いていない人だろう。