美術

美術と言葉

山梨俊夫『美術の愉しみ方』(中公文庫) カラー版 美術の愉しみ方 「好きを見つける」から「判る判らない」まで (中公新書) 作者:山梨俊夫 中央公論新社 Amazon この本には、美術と言葉の関係に触れた記述が多いと感じた。その部分を簡潔にまとめてみた。 …

現代アートの考え方

現代アートの本をまた買ってしまった。 現代アートはすごい デュシャンから最果タヒまで (ポプラ新書) 作者:布施英利 ポプラ社 Amazon これは現代アートの「考え方」を教えてくれる本。 そう、現代アートは考えて楽しむ。 ゴッホのひまわりの絵だったら、見…

洲之内徹と「アルプ」

洲之内徹の『気まぐれ美術館』読了。 最後に収められている「くるきち物語」と題された文章の中に、 私は二年ほど前から「アルプ」という山の雑誌に、毎号短い文章を書いている。 とあるのを読んで、おや? と思った。というのは、洲之内徹は山登りとは縁が…

マティス展

渡辺淳一が「日本的不遇の作家・マティス」という文章の中で、マティスが日本においていかに人気がないか、それはなぜなのかについて書いている。 …日本人は絵画に文学的、哲学的感動を求める。アンケートによれば、人気があるのはゴッホを筆頭に、「落穂拾…

現代美術を哲学する

丸、三角、四角などの図形で構成された幾何学的抽象絵画が、どのように生まれてきたのか。カンディンスキー、モンドリアン、マレーヴィチなどの思考と実践をたどりながら、丁寧に説いていく。色と形、あるいは垂直線と水平線とで構成された作品、何か具体的…

山本容子を楽しむ

昨年12月、鵠沼の湘南西脇画廊に山本容子銅版画展を観に行った。 俳句と絵をコラボさせた句集『山猫画句帖』の原画も展示されているというので、それを楽しみに。山本容子が面白い句を作っているのを知っていたから。 会場では、もし一枚買って帰るとしたら…

自分から遠くなる

随筆 八十八 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) 作者:中川 一政 講談社 Amazon 伊勢佐木町の古本屋で、中川一政の『随筆八十八』を見つけて購入。 前の持ち主の引いた線が残っている。たとえばこんな箇所。 威張ったって駄目だ。見る人が見ればみな見え透…

疑問を嚙み締める

美術、応答せよ!: 小学生から評論家まで、美と美術の相談室 (単行本) 作者:森村 泰昌 筑摩書房 Amazon 『美術、応答せよ!』、面白いタイトルだ。 小学生から大人まで、美術に縁のなさそうな人から美術にかかわる仕事の人まで、さまざまな人からの多種多様な…

文は人なり

須之内徹の『絵の中の散歩』はエッセイを読むことの面白さを満喫させれてくれる。 画廊の仕事の内側、画商から見た画家の素顔、一枚の絵のたどる運命…味のある文章が興味深い様々な世界を見せてくれる。日本人の洋画家の作品に対する親しみが増す。ちょっと…

感応は官能

横尾忠則の『名画感応術』。ゴッホ、マネ、モディリアーニ、などの名画を、横尾忠則流に鑑賞、といっても、期待していたほど刺激的なことは書いてないが、取り上げた名画はどれもみな魅力的。 名画感応術―神の贈り物を歓ぶ (光文社文庫) 作者:横尾 忠則 発売…

ロンドン、ロンドン

今日は、ロンドンの日。 上野の西洋美術館で開催中の「ロンドン・ナショナルギャラリー展」を観てきた。 会期終了のぎりぎりになって、やっぱり観ておきたくなって、日時指定のチケットの空き状況をネットで調べたら、昼間の枠はすべて完売、夜の時間帯にか…

絵画は自分の記憶を引き起こす

窪島誠一郎の『絵をみるヒント』を読んだ。 絵をみるヒント(増補新版) 作者:窪島 誠一郎 発売日: 2014/04/18 メディア: 単行本 「水商売出身の美術館屋」と自称する著者だからこそ書ける、絵画と美術館への愛。 群馬県桐生市の大川美術館と長野県東御市の梅…

関根正二の自画像

鎌倉の「関根正二展」を観に行ったのは2月13日、前期展示の期間中だった。展示替えした後にもう一度行きたいと思っていたのに、休館になってしまった。出品リストを見ると、前期後期で随分たくさんの作品が入れ替わっている。そうと知ると、今回の新型コロナ…

絵の授業を俳句の授業のつもりで聴く

『千住博の美術の授業 絵を描く悦び』(光文社新書)を読んだ。 千住博の美術の授業 絵を描く悦び (光文社新書) 作者:千住 博 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/06/27 メディア: Kindle版 絵を描く人への教えは、あらゆる表現活動に当てはまるに違いな…

歌人、中川一政

真鶴半島にある中川一政美術館を見てきました。 真鶴に行った本当の目的は、御林の中の遊歩道を歩くことだったのですが、先日の台風で倒木が道を塞いでしまったらしく、通行不可。そこで、予定を変更してゆっくりと絵を見て帰ることにしました。ところが、災…

岩波新書を代表する一冊

高階秀爾の『名画を見る眼』を、僕は岩波新書を代表する一冊である、と断言してしまおう。いやいや、偉そうに「代表する」なんて言えるほど僕は岩波新書をたくさん読んでいるわけではない。でも、これが名著であることは間違いないと思う。今年1月、このブ…

ゴッホを読む

僕がこれまで読んだ、「絵」について書かれた本の中では、これが一番面白かった。筆者の批評眼は鋭いし、語り口も読者を退屈させない。名エッセイとの評価もあるようだ。僕は古本屋で見つけた単行本を読んだのだが、今は文庫になっている。内容的に古びた部…

絵画と建築

(当然と言えばそうなのだが)ル・コルビュジェの展覧会が行われている今回ほど、建物としての国立西洋美術館の魅力に気づかされることはこれまでなかった。西洋美術館が目的地でないにしても、その前を通って都立美術館に行ったり、奏楽堂に行ったり、つま…

近代美術館のさきがけ

『日本近代洋画と神奈川県立近代美術館』は、今から36年も前に発行された本で、当時はまだ鎌倉の別館が建設予定という段階。鎌倉の本館が既に閉館となってしまった今では、本書のガイドブックとしての役割は終わっているのだが、日本の先駆的な近代美術館の…

芸術の本質に届く名著

高階秀爾の『続 名画を見る眼』は名著だと思う。山本健吉の『現代俳句』が名著であり、深田久弥の『日本百名山』が名著であるのと同じ意味合いにおいて。 続 名画を見る眼 (岩波新書 青版 E-65) 作者: 高階秀爾 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1971/05/2…

フィリップス・コレクション展

三菱一号館美術館で開催中の展覧会、「フィリップス・コレクション展」を観てきました。 コレクターの業績という観点から作品を収集した順に並べて見せるという企画も、なかなか面白いと思いました。僕好みの絵にたくさん出会えて満足です。ボナール、ヴュイ…

諸悪の根源としての「感動」とは?

冒頭に置かれた「感性は感動しない」を何度も読み返した。しかし、どうしても途中から理解できなくなる。 感性は感動しないー美術の見方、批評の作法 (教養みらい選書) 作者: 椹木野衣 出版社/メーカー: 世界思想社 発売日: 2018/07/13 メディア: 単行本(ソ…

北欧を訪ねた気分で、湘南の夕日を眺める

フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトの展覧会を観に、葉山まで行って来ました。建物の設計だけでなく、家具、照明器具、ガラス器などのデザインを手がけたアアルトの魅力がたっぷりと詰まっていて、見応えたっぷりです。 アアルトの椅子に座って夕日を眺…

絵をもっと楽しむために

池上英洋の『西洋美術史入門<実践編>』を読んだ。西洋美術史入門・実践編 (ちくまプリマー新書)作者: 池上英洋出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/03/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 同じ著者の『西洋美術史入門』の続編という…

プーシキン美術館展

プーシキン美術館展を開催中の東京都美術館は平日だというのに大賑わい。今日からワールドカップ、ロシア大会が始まるからかな?(関係ないか…) 僕の特にお気に入りの作品は、次の3点。 アルマン・ギヨマンの「廃墟のある風景」 ジャン・ピュイの「サン=…

「長谷川利行展」のち「釘ん句会」

昨年の今頃、東京近代美術館で観た長谷川利行が良かったという話はこのブログに書いたが、その長谷川利行の展覧会があると知り、プーシキンやルーブルも観たいけどまずこっちが先、と思って昨日行ってきた。 初めて行く会場の府中市美術館は、爽やかに晴れ上…

白い箱

「なぜ?」から始める現代アート (NHK出版新書)作者:長谷川 祐子NHK出版Amazon 「なぜ?」は大事。理解の深まりは「なぜ?」から始まる。 ところが次の「なぜ?」は思い浮かんだことがなかった。 なぜ、多くの美術館の展示室は、そろいもそろってこんなに真っ…

絵を描く詩人

清宮質文(せいみやなおふみ)の作品に初めて触れたのは昨年、横須賀美術館でのことだった。作品の前で立ち止まらずにいられない不思議な魅力を感じたことが、記憶の片隅に残っていた。その作品展が水戸の茨城県近代美術館で開催中であると知り、観に行って…

その絵のメッセージは? パトロンは?

西洋美術史入門 (ちくまプリマー新書)作者: 池上英洋出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/12/05メディア: 新書購入: 2人 クリック: 10回この商品を含むブログ (17件) を見る 歴史を学ぶときに重要なのは「単なる固有名詞や年号を暗記することよりも、構造…

続けて原田マハをもう一冊。

モネのあしあと 私の印象派鑑賞術 (幻冬舎新書)作者: 原田マハ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2016/11/30メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見るパリに10日間くらい滞在して、美術三昧の日々を送ることができたら、幸せだろうなあ!