映画

励まさない

「文学国語」の教科書(東京書籍)に、若松英輔という批評家の「言葉を生きる」という文章が載っている。その中の一節。 悲しむ者をいたずらに励ましてはならない。そうした人々が切望しているのは安易な激励ではない。望んでいるのは、涙がそうであるように…

BGMのない映画

映画、「ドライブ・マイ・カー」を観た。 コミュニケーションには、その場所の力というものが働く。食卓、車、閨房…とりわけ、この映画においては車が登場人物の台詞を引き出し、登場人物同士の会話を深めるのに大きな働きをする。原作には、主人公の家福は…

アメリカの良心

ドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を観た。 アメリカの情報と言えば、トランプとその周辺の動きばかりが報道されて、地球はこの先大丈夫なのかと不安になるばかりだが、この映画を観て少し安心した。アメリカにも有名無名の…

映画の限界

今日から岩波ホールで始まった、『12か月の未来図』を観てきた。 僕の知っている教育現場のリアルとはかけ離れた世界。現実の教育困難校の子供たちやその家庭はもっと複雑で難しい。映画というのは現実を単純化し、美化してしまうものらしい。興行として成り…

もう一度観たい

恵比寿ガーデンシネマで「マイ・ブックショップ」を観てきた。 予告編で、映画の中にレイ・ブラッドベリの『華氏451度』が出てくるのがわかっていたので、自分のブログの記事を検索して、どんな話だったか復習しておいた。もし内容を忘れたままだったら、…

読む絵

映画『ブリューゲルの動く絵』を観てきた。 [ ブリューゲルの絵が次々に動き出して、目を喜ばせてくれる映画、などと勝手に想像していたのは、全く僕の見当違いな思い込みで、実際はシリアスなテーマを扱っていて気軽に楽しめるような内容ではなかった。画像…

小津安二郎を観る(その2)

昨晩DVDで 『東京物語』を観ました。これで小津安二郎の晩年の代表作をほぼ観終わったことになります。 『麦秋』『お茶漬けの味』『東京暮色』『彼岸花』『お早よう』については、前に簡単にコメントを書きました。今回はその後に観た五つの作品について…

音楽の楽しみの原点

渋谷のユーロスペースで、『合唱ができるまで』を観て来ました。 アマチュアの合唱団の練習風景をただ淡々と追うだけのドキュメンタリー映画です。観る人によってはただただ退屈なだけの映画かもしれません。僕も、昨年10月にモーツァルトの「サンクタ・マ…

ダイアローグ(No.1)

f 今度は連句を初めようっていうわけ? m いや、そういうつもりではないんだ。たまたま図書館でみつけた『可能性としての連句』と『中層連句宣言』が2冊ともすごく面白かったので、連句関係の本をもう少し読んでみようと思ったんだ。俳句の実作にも生きる…

引用のモザイク

浅沼璞の『中層連句宣言―引用のひかり』を読み終わりました。 前著『可能性としての連句』でこだわりを見せた「連句への潜在的意欲」というテーマが、ここでは「汎引用説」という新たな関心に飲み込まれていきます。 日本文学の伝統の中には「本歌取り」など…

小津安二郎を観る(その1)

この1週間で、小津安二郎の映画のDVDを9本も借りてしまい、そのうちの5本を見終わったところです。特別映画好きでもない僕にしては珍しいことですが、これはたまたまつぎのようなきっかけが重なったからなのです。 その1…今ワクワクしながら読んでい…

木枯らしの東京にて

東京では今年初めてという木枯らしの中、日比谷野外音楽堂へ。 「教育基本法改悪、反対!」 と叫んでから、今度は渋谷へ。目的はベルイマン監督の映画『サラバンド』。映画に疎い僕は、映画界にイングマール・ベルイマンなる「巨匠」が存在することなど全く…