読書

四十にして区切らず

安田登『役に立つ古典』を読んだ。 役に立つ古典 NHK出版 学びのきほん 作者:安田登 NHK出版 Amazon 「四十にして惑わず」の本当の意味について、筆者は次のように語る。 孔子の時代に「惑」という漢字は存在しなかった。孔子は当時から存在した同音の漢字「…

涙腺崩壊?(高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ⑤)

これも勤務校の図書館報に生徒による紹介記事が載っていた本。 青い鳥(新潮文庫) 作者:重松 清 新潮社 Amazon 濁音とカ行、タ行を必ずどもってしまう、不格好な村内先生が、心を病む生徒に寄り添って大切なことを伝えることで、状況を好転させるという話を…

高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ③

本を読む女 (集英社文庫) 作者:林 真理子 集英社 Amazon 林真理子が高校生に人気があるのか、実は僕はよく知らない。でも、僕がこの本を読んだのは、高校生に勧められたから、いや、正確に言えば、勤務校の図書委員会が発行している図書館報の最新号のなかに…

読書会という幸福

『読書会という幸福』(岩波新書)を読んだ。 読書会という幸福 (岩波新書 新赤版 1932) 作者:向井 和美 岩波書店 Amazon 著者は「あとがき」で、タイトルについて編集者から「読書会という幸福」ではアピール力が足りないのではないかという意見があったこ…

非日常の読書空間

タイトルに惹かれてすぐ読み始め、機知に富んだ文章に魅了されてすぐに読み終えた。面白い! 本を快適に読む空間の確保というのは、本好きにとって重大問題なのだ。 本の読める場所を求めて 作者:阿久津隆 朝日出版社 Amazon 僕たちには本を読むための場所が…

笠のとがり

『折々のうた』は、当該季節の部分だけを読んだり、俳句だけを拾い読みしたり、と、いい加減な読み方をして来たが、まだらに読み残しができてしまうので、あらためて最初の巻から読み始めた。大岡信が短歌、俳句、詩(いわゆる現代詩)以外の作品にも目配り…

コペル君と「先生」

君たちはどう生きるか (岩波文庫) 作者:吉野 源三郎 岩波書店 Amazon 実は先月、腰痛治療(ヘルニア)のために入院した。手術は初めての経験で不安はあったけれど、とにかく耐え難いほどの激痛が何日も続いていたので、体にメスを入れることを躊躇している場…

僕が棒を引いて読んだ所

批評っていうと、冷静になって、理性的な判断がだいじだとばかり考えて、愛情とか感動なんかはいらないように思っている人は、ぜんぜん、批評については知らない人だね。 本当の批評というものは、創造することだ。否定するんでなくて、つくり出すことだよ。…

本が本を呼ぶ

太宰治の辞書 作者:北村 薫 新潮社 Amazon 題名に惹かれて読み始めたが、どんどん引き込まれていった。こんな面白い本があったとは、知らなかった。 小説は書かれることによっては完成しない。読まれることによって完成するのだ。ひとつの小説は、決して《ひ…

古本をつまみに飲む

ビブリオ漫画文庫 (ちくま文庫 や 50-1) 発売日: 2017/08/07 メディア: 文庫 僕には、ここに収録された作品のすべてが秀作であるとは感じられない。しかし、「古本屋台」はなかなか魅力的(原作:久住昌之、画:久住卓也)。古本満載の屋台で飲む焼酎のお湯…

真意を探る

こういう本があるのを知って、取り寄せて読んでみたのだが、『人生論ノート』の難しいところはやはり難しいことに変わりはない。ただ、この著作の難しい言い回しの裏には、発表当時の時局への遠回しな批判が込められているかもしれない、という視点を持って…

読書の味覚

三木清は、「読書遍歴」(『読書と人生』所収)の中で、「昔深く影響されたもので、その思い出を完全にしておくために、後に再び読んでみることを欲しないような本があるものである」と言っている。三木清が「深く影響された」本というのは徳富蘆花の『自然…

人生の残り時間

最近は人生の残り時間というものを意識して、新しい本を買って「積ん読」の山を無駄に高くすることは極力控えるよう心掛けている。それよりも、いつか読むだろうと思っていた本で既にいっぱいになっている本棚から、日焼けしたりシミだらけになったりした古…

嘘発見器

清水町先生 (ちくま文庫) 作者:小沼 丹 発売日: 1997/06/01 メディア: 文庫 小沼丹が終生の師と慕った清水町先生、すなわち井伏鱒二の、人と作品について愛情を込めて綴った随筆集。井伏鱒二の作品理解への最良の手引きであると同時に、小沼丹の井伏譲りの軽…

書店巡りの旅

旅する本の雑誌 発売日: 2018/07/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) 旅先でたまたま雰囲気の良さげな本屋を見つけて、ぶらりと立ち寄る、という経験はこれまでに何度かあるが、最初から本屋を目的とした旅の計画を立てたことはなかった。 『旅する本の雑…

記憶か思考か

橋爪大三郎の『正しい本の読み方』(講談社現代新書)を読んだ。 正しい本の読み方 (講談社現代新書) 作者:橋爪 大三郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/09/20 メディア: 新書 読んだことは、忘れてよい。本のなかみは、忘れていいことが、大部分です…

これで『平家』を読んだ気になってはいけないが…

平家物語 マンガとあらすじでよくわかる (じっぴコンパクト新書) 作者: 出版社/メーカー: 実業之日本社 発売日: 2011/11/10 メディア: 新書 授業の準備のために購入。 長大な物語が要領よく簡潔にまとめられていて、ありがたい。『平家物語』の全体像を見渡…

「巣作り」としての文学

文学 (ヒューマニティーズ) 作者:小野 正嗣 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2012/04/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) 小野正嗣の『文学』は比喩に満ちている。 文学という営為は言葉によって巣を作るという行為に似ていると書いた。しかし、くり返…

図書館の蔵書検索機能は便利だ

片岡義男の小説を読んでみようと思った。とりあえず最寄りの図書館にあれば借りようと思って、横浜市立図書館の蔵書検索ページで探しているうちに、わざわざ図書館まで出かけなくても、家にある本の中にも片岡義男の短編小説を収めたものがあることがわかっ…

どんな本か「予測」してみる

このブログは通常は読み終えた本(時には読みかけの本)に関して書いていますが、今回はこれから読む本(石黒圭『「予測」で読解に強くなる!』)について書きます。まだ全く中を開いていない今の段階で、こんなことが書いてあるのではないか、という「予測…

ポケットの穴

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2006/08/17メディア: 新書購入: 33人 クリック: 160回この商品を含むブログ (189件) を見る 勉強みたいという悪いイメージもあるかもしれないが、スロー…

活字頼み

活字たんけん隊――めざせ、面白本の大海 (岩波新書)作者: 椎名誠出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/01/21メディア: 新書購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (17件) を見る 椎名誠を読むのは、ずいぶん久しぶりだ。このブログを始めてからはた…

コーヒーの飲める図書館が必要か?

『沸騰!図書館』を読んだ。 そして、すぐにアマゾンのカスタマーレビューを読んでみた。すると、なかなか面白いことになっている。 「このレビューが参考になった」の投票率が90パーセント前後と、評価が高いものと、10〜20パーセント程度と極端に評価…

雨の連休初日

冷たい雨が降ったり止んだりの、残念な休日。 天気が良ければ、軽いハイキングとか、庭木の剪定とか、やりたいことはたくさんあったんだけど、仕方がない。 こんな日はどこへも行かず、家でじっくり読書と決め込む。 と言っても、一日に読める量なんて、たか…

本がなくても…

どこに行くにも本は必ず持って出る。 電車での移動中、病院の待合い室での待ち時間、宿泊先の夜のひととき‥貴重な読書のチャンスは逃してはならない 本を読む絶好のチャンスなのに、手元に本がない! などという失態をおかしてはならないのだ。 村上春樹は、…

線を引いて読むのは、その著者に対する最高の敬意である。

何と一カ月以上も更新できなかった。2005年にブログを始めてから初めてのことだと思う。 自転車通勤だから電車の中での読書時間が作れないし、帰宅して夕食を食べ終わると、仕事の疲れとビールの酔いで、ほどなく襲ってくる睡魔にあえなく負けてしまうと…

どれにしよう

忘れられる過去作者: 荒川洋治出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2003/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 30回この商品を含むブログ (44件) を見る大好きなことについて語ったり書いたりしているのを、聞いたり読んだりするのは楽しい。 荒川洋治のエ…

書評とガイドブック

読みかけのまましばらく放置されている本が何冊かある。 池澤夏樹の『読書癖2』もその中の一冊。読み残してあった最後の方のやや固めの書評を読んでいたら、こんな一節に出会った。 書評の基本は紹介と評価だ。筆者は自分の人格を中和し、偏見を抑えて、客…

食べるように読む

遠い朝の本たち (ちくま文庫)作者:須賀 敦子筑摩書房Amazon僕と須賀敦子とでは、血筋も、生まれ育った環境も時代も違い、読む本の傾向も(これは男か女かの違いも大きく関係しているように思いますが)ずいぶん異なります。それでも須賀敦子の少女時代から青…

読書の「場」

本日、新しい勤務校に移ってはじめての授業。 90分授業初体験ということもあって少々不安だったのですが、とても気持ちよく付き合えそうな生徒達で、90分も長くは感じず、まずまずのスタートがきれたかなと思います。とはいうものの、毎週火曜日(さっそ…