俳句

言葉を拾いに

「街」同人の上田貴美子氏より、句集『暦還り』が送られてきました。ありがとうございます。 以下、丸印を付けた句を紹介し、そのうちの数句については拙い鑑賞文を書かせていただきます。人増えてをり山の霧すぐ晴れて 長く苦しい登りもひと段落、誰もが一…

家づくり、俳句づくり

本日は、26回目の「釘ん句会」でした。 「釘ん句会」は、「家づくりの会」のメンバーである建築士Oさんが、同会所属の建築士で俳句に興味のある人に声をかけて始まった句会です。そこになぜ僕が顔を出しているかというと、我が家を設計してくれたのがOさ…

久々の鍛錬句会

2年半ぶりに「街」の鍛錬句会に参加させていただきました。 久々の句会で緊張しているのに、出された題がなんと「恋文に添える一句」、恋文を受け取った相手が喜ぶような句をつくれというのです。 もういきなり意表を突かれてしまって、ほとんど頭はパニッ…

ルノワールは汚い

「汚いなあ…」と思う。ルノワールの絵のことである。 もちろん、そのすべてが、ということではない。しかし、昨年、展覧会場で観たルノワールの絵のいくつかはやはりそういう思いを抱かせた。 今、『赤瀬川原平の名画読本』を拾い読みしていたら、こんな一節…

お笑いの感覚、俳句の感覚

芸人と俳人作者: 又吉直樹,堀本裕樹出版社/メーカー: 集英社発売日: 2015/05/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (13件) を見る 芸人である又吉直樹を相手に、俳人である堀本裕樹がマンツーマンで俳句の講義をすすめる。だから、本の題…

がんばれ、あかぼし!

ネットサーフィンしていて、こんな本があることを知り、さっそく購入。なかなか面白かった。あかぼし俳句帖 1 (ビッグコミックス)作者: 有間しのぶ,奥山直出版社/メーカー: 小学館発売日: 2015/07/30メディア: コミックこの商品を含むブログ (3件) を見る 赤…

四月からの新番組

たまには本屋をのぞかないといけないなと思った。 今日、仕事帰りに久々に本屋に立ち寄ると、NHKのラジオでこんな番組が始まっていたのを知った。NHKカルチャーラジオ 文学の世界 十七音の可能性 俳句にかける (NHKシリーズ)作者: 岸本尚毅出版社/メーカ…

有からの創造

肉眼の思想―現代芸術の意味 (中公文庫 M 100)作者: 大岡信出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1979/06/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る エネルギーの充満するこの世界が何ものかによって創造されたのだとしても、その創造は、無からで…

蛭のはなし

近年丹沢では蛭の生息範囲が広がっているらしい。最高峰の蛭ヶ岳の名が、蛭に因んだものであるかどうかは定かではないが、この山域にも蛭が多く生息することは確かだ。先日、三十数年ぶりに蛭ヶ岳の頂上を踏んだが、その時は幸いこいつには出会わずに済んだ。…

さあ、もういっぺん…

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石作者: 伊集院静出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/11/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 短い生涯の中で大きな仕事を成し遂げた文学者、正岡子規を、愛情を込めて描ききった長編評伝小説。漱石、虚子…

子規と信仰心

森本哲郎の「念仏としての俳諧」という文章の中の一節。 …日本では詩歌というものが、つねになんらかの宗教的な色彩を帯びているということである。日本の詩歌は、この意味で「美」に仕えるというより、「真」、いや、「信」を志向してきたといってよい。そ…

おとこ・の・ぼーる

『子規に学ぶ俳句365日』を読んでいたら、夏草やベースボールの人遠しという句が出てきた。先日読んだ渥美清の句集の中にこれと似ている句があったことを思い出した。ベースボール遠く見ている野菊かなもしかしたら、渥美清も子規の句を読んでいて、影響…

汀女と風天

本の返却のため、横浜市立中央図書館に行って来た。今日は終日曇り、雪もちらつくかもしれないという天気予報だったのに、気持ちの良い青空。図書館に行く前に、すぐ先の野毛山公園に足を伸ばしてみた。 ずいぶん前に来たことがあるはずなんだけど、野毛山公…

未来

生徒一人一人が自分でテーマを決めて、そのテーマに沿った内容の詩、短歌、俳句をそれぞれ一編以上探して紙にまとめるという授業をやっている。生徒に示す見本として、僕はこんなのを作ってみた。 さて、生徒の中に、「未来」というテーマを設定し、そのテー…

カーニバルの中へ

昨日は久々(一年半ぶり)に「街」の句会に参加。成績の方は…まあまあかな。 いつものように、句会後の飲み会にも誘っていただき、今井主宰を囲んで賑やかで楽しいひと時。そこで、金原まさ子さんが「徹子の部屋」に出演するという話が出ていたことを思い出…

ひとりの桜

著者より、『玉田憲子句集 chalaza』を送っていただいた。 最初に印をつけたのは、次の句。足の五指拡げてをりぬ海開きこの夏初めての海。素足の足裏が砂を感じる。何気なく指を動かすと、さらに強く、砂が足を刺激してくる。ヒトが四肢で物を掴んでいたころ…

大岡頌司の発見

古本屋で大岡信の『短歌・俳句の発見』という本を見つけて購入。 この本に収められている「さかさ覗きの望遠鏡―大岡頌司の俳句」という文章を読んで、この大岡頌司という人の作品は、この春「週刊俳句」に掲載されて話題になっていた外山一機氏の「上毛かる…

♪あれは3年前、いや30年以上前でしょう。

高校生の娘に付き合って、江古田にある日大藝術学部のオープンキャンパスに行ってきた。僕も「日藝」には以前から興味あったし。 娘のお目当てのデザイン学科だけでなく、同じ棟の文芸学科のフロアを覗いたり、林芙美子展をやっている資料館を観たり、さらに…

大磯界隈歴史・文学散歩

大磯駅から徒歩10分くらいで、島崎藤村旧宅に着く。 萩の枝で作られた下地窓。 大正硝子の窓に、庭の新緑が写る。 大磯で最期を迎えた藤村、ここに眠る(地福寺) 鴫立庵。ここは日本三大俳諧道場の一つ。(他の二つは、京都の落柿舎と滋賀の無名庵)今で…

スゴくいい本なんだけど…

角川俳句ライブラリー この俳句がスゴい!作者: 小林恭二出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2012/08/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る小林恭二が『この俳句がスゴい!』で取り上げている俳人は、次の10人。 高浜虚子・種田山頭火・…

俳句と酒と美味いもの

句会で遊ぼう (幻冬舎新書)作者: 小高賢出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/09/28メディア: 新書この商品を含むブログを見る句会の面白さを伝える本としては、小林恭二の『俳句という愉しみ』『俳句という遊び』の二冊をまず思い浮かべる。これらは「当代…

平凡な言葉

もっとも気になっている現役俳人の一人、小川軽舟の句が読みたくて購入。小川軽舟―ベスト100 (シリーズ自句自解 1)作者: 小川軽舟出版社/メーカー: ふらんす堂発売日: 2010/09/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る か…

なるほど、「客観写生」とはこういうことだったか。

今日は午前中から二階のベランダのすのこの補修をやっていたのだけれど、日差しがあまりにも強いので、作業を中断。陽が傾くまで、最近読み終わったばかりの『生き方としての俳句』(岸本尚毅著)について書くことにする。生き方としての俳句―句集鑑賞入門作…

登山家、山口誓子

僕に俳句の魅力を教えてくれたのは、小学校の教科書で出会った 夏草に汽罐車の車輪来て止る だ。そのせいか、山口誓子と言えば、 七月の青嶺まぢかく溶鉱炉 夏の河赤き鉄鎖のはし浸る のような、自然の中に現代的な人工物を配した句を作る人という印象が強い…

名句を持ち歩く

岩波文庫から出た『加藤楸邨句集』を鞄に入れて持ち歩き、少しずつ読んでいる。(500ページを超える大部なので、持ち歩くには重いのだけれど…) 僕が今まで持っていた本で加藤楸邨が読めるのは、新潮社の『日本詩人全集31』だったが、これは昭和44年…

創作としての写生

今年度も「今日の俳句」と題して、国語総合の授業の中で俳句を一句ずつ紹介している。 一番最初の授業で取り上げたのは、高野素十の 空をゆく一とかたまりの花吹雪 ちょうど、満開だった桜が散り始めた頃だったから、生徒もピンとくるだろう。そこで、黒板に…

顔を詠む

句集『進次』を読んだ。 まず、目についたのは「顔(貌)」という言葉だ。「顔(貌)」を詠んだ句といえば、加藤楸邨の 蚊帳出づる地獄の顔に秋の風 (颱風眼) を真っ先に思い出してしまうのだが、楸邨にはそのほかにも 昆虫のねむり死顔はかくありたし (…

駆け足や

黒板に今日の一句。 駆け足や宇宙は秋の空の上 越智友亮 「どうだこれ?」 「それ、秋の空じゃなくてもいいじゃん。」 「じゃあ、こうしてみよう。」 駆け足や宇宙は( )の空の上 「この中に、春、夏、秋、冬のどれかを入れてみて、どれが一番しっくりいく…

降りてくる言葉

ぼくらの言葉塾 (岩波新書)作者: ねじめ正一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/10/21メディア: 新書 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を見る詩を読んだり作ったりするときに大切なことは、無駄な力を抜いて、言葉の持つパワーに身も心も委ねて…

金魚すくいの薄い紙

西原天気氏より句集『けむり』が届いた。 数年前、「週刊俳句」に駄文を寄せていた縁から、このような幸運に恵まれることになった。嬉しい。 「俳句的日常」というのが西原氏のブログの名前だけれど、『けむり』に収められた俳句は総じて「日常的俳句」と呼…