未来

 生徒一人一人が自分でテーマを決めて、そのテーマに沿った内容の詩、短歌、俳句をそれぞれ一編以上探して紙にまとめるという授業をやっている。生徒に示す見本として、僕はこんなのを作ってみた。

 さて、生徒の中に、「未来」というテーマを設定し、そのテーマに沿った俳句として、芭蕉

蛸壺やはかなき夢を夏の月

を選んでいた生徒がいた。「夏の詩歌」とか「月の詩歌」というテーマでなく、「未来の詩歌」というテーマでこの句を取り挙げた生徒の感覚が秀抜だと感じた。もっとも、当の生徒に聞いてみると、この句を「未来」という語と結びつけて説明していた本が図書室にあったらしいのだが、それがどの本だったかもう思い出せないという。参考図書名もしっかりメモしておくように指示しておけばよかったと悔やまれる。
 いずれにしろ、芭蕉のこの句は、「未来」という光を当てることによって、蛸壺の中で見る夢のはかなさが際立ってくるのは確かなように思われる。