降りてくる言葉

ぼくらの言葉塾 (岩波新書)

ぼくらの言葉塾 (岩波新書)

詩を読んだり作ったりするときに大切なことは、無駄な力を抜いて、言葉の持つパワーに身も心も委ねてしまうことなんだと教えられる。著者はそのことを、「言葉の関節をはずす」とか「言葉の回路を全開に」すると言っている。よくわかる。たぶん、そうすることで、今まで遠いところにあった詩がぐっと自分に近づいてくるということはあるにちがいない。でも、それは簡単なことじゃないと思う。そういう心構えだけでは太刀打ちできない詩もあると思う。
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俳句がなかなか作れなくてアセるときがあるけれども、詩を書く人にも同じようなことがあるらしい。

自分で書いておきながら、何でこんな言葉が出てきたかわからないときがあります。私の場合、詩を書くというのは、じつは書くのではなく言葉が降りてくるのを待つといったほうがいいのですが、机に向かって言葉を待っていると、このまま永遠に言葉が出ないのではないかと不安になってくるときがあります。

言葉が降りてくる」という感覚はわかる。なかなか降りてきてくれないから困るのだ。
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僕はこの本でいとうひろしという絵本作家の名前を初めて知った。

いとうひろしの作品との出会いは『だいじょうぶ だいじょうぶ』である。この作品はたくさんの人たちに読まれている絵本である。涙あり、笑いありであるが、エネルギッシュさはない。作品の底に流れるのは静けさである。…『だいじょうぶ だいじょうぶ』は何度も読みたくなる本である。この絵本を一度読んだ人は、いつもカバンの中に入れて、電車の中、ベンチ、歩きながら、喫茶店などどこでも読みたくなると辛抱できずにページを開くにちがいない。

こんな風に言われたら、誰だって読んでみたくなる。この世にあるいいものの存在を教えてくれる本は、いい本である。