洲之内徹と「アルプ」

洲之内徹の『気まぐれ美術館』読了。

最後に収められている「くるきち物語」と題された文章の中に、

私は二年ほど前から「アルプ」という山の雑誌に、毎号短い文章を書いている。

とあるのを読んで、おや? と思った。
というのは、洲之内徹は山登りとは縁がなさそうに思っていたからだが、著者自身、上の引用部にすぐ続けて、

だが、いくら短くても、山のことを何も知らない私が毎月続けて書くのはどだい無理だし、あまりみっともないことにならないうちに早くやめたいと思うのだが、…

と書いている。「アルプ」に文章を書くことになった経緯も書かれているが、その話の中に、串田孫一の名前は出てこない。串田孫一は「アルプ」の創刊、編集に携わった中心人物だし、絵についての文章も多く書き、また自らも絵を描いている。洲之内徹と接点がなかったとは考えられない。
しかし、これまでに『絵の中の散歩』『気まぐれ美術館』の二冊を読んだが、串田孫一の名前の出て来た記憶がない。「アルプ」の名前が出てきて「おや?」と思ったのはそのせいもある。
洲之内徹の文章を読むごとに、その交友関係の広さを知らされるが、続巻の『帰りたい風景』、『セザンヌの塗り残し』、『人魚を見た人』、『さらば気まぐれ美術館』を読んでいけば、どこかに串田孫一の名前も登場するのかもしれない。

ところで、「アルプ」に載せた文章というのも読んでみたいものだ。