現代美術を哲学する

丸、三角、四角などの図形で構成された幾何学抽象絵画が、どのように生まれてきたのか。カンディンスキーモンドリアンマレーヴィチなどの思考と実践をたどりながら、丁寧に説いていく。色と形、あるいは垂直線と水平線とで構成された作品、何か具体的なものを写し出したのではない、非対象絵画が必然的に産み落とされるまでの道筋が理解できる。しかし、難しいのはその先だ。

抽象絵画は最終的段階として、黒一色に塗られた画面など、誰にでも描けそうな作品を生み出す。オリジナルの作品とそれを真似た作品があるとして、その優劣はどのようにして決まるのか? あるいは、既成の商品のパッケージをコピーしただけのようなものが現代美術として生み出される。両者の違いはどこにあるのか? それは芸術をどう定義するか、つまり、何が芸術を芸術たらしめているのかという、明確な答えの存在しない哲学的問いへとつながる。そんな問いにあえて踏み込んだ本書は、決してわかりやすい本とは言えない。