文は人なり

須之内徹の『絵の中の散歩』はエッセイを読むことの面白さを満喫させれてくれる。

画廊の仕事の内側、画商から見た画家の素顔、一枚の絵のたどる運命…味のある文章が興味深い様々な世界を見せてくれる。日本人の洋画家の作品に対する親しみが増す。ちょっと無理してでも、自分のお気に入りの絵を所有してみたいとも思う。

しかし何と言ってもこの本の魅力は、須之内徹の文章にある。この文章の魅力を説明するのは難しい。文章が達者、というのはあるが、もちろんそれだけではない。「文は人なり」、すなわち須之内徹という人間の魅力がそのまま文章の味わいになっているかもしれない。須之内徹という人は、どうやら周りから慕われているような気配がある。どんな点が人を惹きつけるのか。自分の好きなこと、やりたいことに無邪気に夢中になれるところ? 絵の良さ、人の美点を見抜く力があるところ? 自分の思いを飾らずに表に出すところ?