絵を描く詩人

 清宮質文(せいみやなおふみ)の作品に初めて触れたのは昨年、横須賀美術館でのことだった。作品の前で立ち止まらずにいられない不思議な魅力を感じたことが、記憶の片隅に残っていた。その作品展が水戸の茨城県近代美術館で開催中であると知り、観に行ってきた。

 絵や写真に「詩情」を感じるという場合、なぜかその作品は決まって静謐さやはかなさを感じさせる。詩は、喜怒哀楽といったあらゆる感情を表すものなのに、喜びにあふれた絵画や怒りに満ちた絵画を「詩を感じる」と評することはないようだ。なぜだろう? 清宮の作品を評するときに使われる言葉は「詩情ゆたかな」や「詩情あふれる」である。清宮自身も、自分を「絵を描く詩人」と呼んだそうだ。そしてその作品が感じさせるのは哀しさであり、静けさである。音のない世界。しかし、観る者に確実に何かを語りかけてくる。

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 館内には、木版画制作を体験できるコーナーが設けられている。写真手前に写っているのが、僕の作品。