美術

初めての原田マハ体験

『楽園のカンヴァス』読了。ミステリーや冒険小説を読むようなワクワク感を味わわせてくれる一方で、読者を陶然とさせるファンタジーの雰囲気も漂う。国境を越えた切ない恋の物語としても読める。 そして、西洋絵画に興味を持つ読者にとっては、業界の裏側を…

ゴッホと日本

東京都美術館でやっている「ゴッホ展」の売店で売っていた文庫本サイズの布製ブックカバーがなかなか良かったのだが、ちょっと高くて買えなかったので、同じ絵を紙に印刷してブックカバーにしてみた。 今回の展覧会は、ゴッホと日本との相互関係に焦点を絞っ…

萬鐵五郎展

置き場所に困るし、安い買い物じゃないからやたら手を出さないようにしている展覧会の図録だが、これは迷わずに購入。(「没後90年 萬鐵五郎展」神奈川県立近代美術館にて) 当時の画家として、当然ヨーロッパの印象派〜キュビスムあたりの動向にも目がいく…

発見! 長谷川利行

企画展と常設展を同時開催するような大きな美術館では、企画展のチケットで常設展も観覧可能となっているケースが多いと思う。とはいえ、企画展を見た後ではもう疲れちゃって、常設展の方はおざなりというか、観たとしても駆け足、という感じになってしまう…

向きが違う!

先週の土曜日、葉山の神奈川県立近代美術館で観た「谷川晃一・宮迫千鶴展」は期待以上の面白さだったが、中でも宮迫のコラージュ作品が興味をひいた。展示作品は撮影可能だったので、写真もたくさん撮った帰った。これを参考にして、自分でもコラージュにチ…

やわらかな感受性

さあ、連休。どこへ行こうかと考えたとき、真っ先に思いつくのが、どこか美術館へ行ってじっくり絵と対話して来よう、ということ。かといって、都心のメジャーな美術館の企画展は超混雑するのが目に見えているので、この時期は避けたい。地方の美術館の常設…

モランディ展

東京ステーションギャラリーで行われている「ジョルジョ・モランディ〜終わりなき変奏」を観てきた。 年譜によれば、モランディという人は昨日取り上げた3人の作家たちのような起伏に富んだ人生を送った人ではない。53歳の時、ファシスト体制に反対する運…

地方美術館の魅力

昨日は、国立新美術館で「はじまり、美の饗宴展〜すばらしき大原美術館コレクション」、今日は静岡県立美術館で「風景画の誕生〜ウィーン美術史美術館展」及び同時開催の「日本人の風景画」を観てきました。東京都内の美術館がその数と質において他の地域を…

村上隆と出会う

ぜひ見たいと思っていた展覧会の一つ、「村上隆のスーパーフラット・コレクション」(横浜美術館)を観てきた。 人のコレクションを覗き見るというのは、面白いものだ。コレクションにはその人自身の作品と言える一面もあるのではないか。つまり、コレクター…

菱田春草を観る

そごう美術館で開催中の「日本画の革新者たち展」を観てきた。今までは日本画にしても洋画にしても、日本の絵画にはあまり関心がなかったのだが、最近は日本人の作品に触れる機会が増えるに従って、興味関心も膨らんできた。興味が湧いてくると、すぐにその…

見逃せない!美術展

今年は展覧会に行く気満々で、こんな雑誌まで買ってしまった。(付録のカレンダーが欲しかったというのもあるけど…) 驚いたのは、今年に入ってブログで取り上げたばかりのルノアールの「ピアノによる少女たち」が、なんと東京にやってくるということ。(4…

車の色、絵の色

17年間乗った車の買い替えを検討し始めてから数カ月が経ってしまった。購入候補の車種はほぼ決まっているのだが、どの色にするかがなかなか決まらない。そろそろ結論を出そうと、今日は、カタログで見て良さそうに思えた色の車を見に、少々遠いディーラー…

ルノワールは汚い

「汚いなあ…」と思う。ルノワールの絵のことである。 もちろん、そのすべてが、ということではない。しかし、昨年、展覧会場で観たルノワールの絵のいくつかはやはりそういう思いを抱かせた。 今、『赤瀬川原平の名画読本』を拾い読みしていたら、こんな一節…

印象派―権威からの自由

あけましておめでとうございます 今年もよろしくお願いいたします印象派 〔新版〕 (文庫クセジュ)作者: マリナフェレッティ,武藤剛史出版社/メーカー: 白水社発売日: 2013/10/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 年内に読み終えるはずだったのが…

鎌倉近代美術館

10月11日、連休中はやっているだろうと疑いもせず、よく調べもしないで行ってみたら展示替えのためにまさかの休館中だった県立近代美術館。今年度一杯で閉館してしまうので、ぜひとも一度は行っておきたいと思っていたのだが、今日、美術の研究授業の一…

美術館巡り

文庫本の棚に『ひろしま美術館』という本があった。ひろしま美術館に行った記憶は全くないのだが、探してみたら入館券も見つかったので、この本はひろしま美術館に行った際に、その売店で買ったものに違いない。広島には30年ほど前に修学旅行の引率で行っ…

ヴュイヤールとの再会

三菱一号館美術館の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」で初めて出会って以来、すっかり僕のお気に入りになってしまったエドゥアール・ヴュイヤールの作品を、今日訪れた「ブリジストン美術館コレクション展〜ベスト・オブ・ザ・ベスト」でもまた観る…

印象派は面白い

この春に二つの印象派の展覧会を観て以来、印象派の絵に俄然、興味が湧いてきた。印象派の作品そのものの良さに開眼したというよりも、印象派以前の西洋の絵画が、印象派の画家たちの様々な試みを経て20世紀の絵画の様々な流れにつながっていく、その過程…

有からの創造

肉眼の思想―現代芸術の意味 (中公文庫 M 100)作者: 大岡信出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1979/06/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る エネルギーの充満するこの世界が何ものかによって創造されたのだとしても、その創造は、無からで…

アートと非アート

先日、「黄金町バザール」を開催中の黄金町界隈を歩いた。 展示会場で撮った作品の写真と、展示会場近くの路上で撮った自転車の写真と、同じく路上で写した大ゴミの張り紙の写真。3枚を見比べていると、アートと非アートを区切る明確な線は存在しないような…

現代美術の諸問題をめぐる思考

池田満寿夫の『模倣と創造』(中公新書)は、現代美術とそれを取り巻くさまざまな営みの意味について問いかける。模倣と影響はどう違うのか? 芸術は現実を変えうるか? 文章書くことと絵を書くことの違いは? 批評とは何か? そもそも「見る」とはどういう…

確かに似ていると感じたのは、気のせいじゃないと思う。

オーケストラの練習の帰りに横浜美術館に寄ってみると、入口前にはチケットを買う順番待ちの人の列ができていた。 僕は常設展示だけを観るつもりで来たのだが、チケット窓口は一か所しかないのでやはり並ばなければいけないのだった。僕は正直言って奈良美智…

読む絵

映画『ブリューゲルの動く絵』を観てきた。 [ ブリューゲルの絵が次々に動き出して、目を喜ばせてくれる映画、などと勝手に想像していたのは、全く僕の見当違いな思い込みで、実際はシリアスなテーマを扱っていて気軽に楽しめるような内容ではなかった。画像…

東京散策

まだ行ったことのない美術館が都内にいっぱいある。時間を見つけて少しずつ行ってみたいと思っているのだけれど、今日は『BRUTUS CASA』(2010年9月号、最強の美術館はどこだ?)で、読者に人気があるとして取り上げていた品川の原美術館へ行ってみることに…

読書用椅子

鎌倉で知人の出演する演奏会があった。せっかく鎌倉まで行くのだから、どこかもう一か所寄って来ようと思って調べたら、こういう展覧会があったので観て来た。 神奈川県立近代美術館(鎌倉)開館60周年 シャルロット・ペリアンと日本 2011年10月22日〜2012…

黄金町バザール、再び

また、黄金町バザールへ。 今回はちゃんとパスポートを持っていたので、前回観られなかった有料展示を中心に見学。 楽しみにしていた竜宮美術旅館は、期待通り、不思議なムードのある建物で面白かった。こんな魅力的な建物が取り壊されてしまうなんて、残念…

黄金町バザール2011

オケの練習が終わったあと、黄金町バザールの会場をぶらぶら覗きながら帰った。 今回は500円のパスポートが必要な会場もいくつかあって、パスポートを持たない不法入国者である僕は、全部を見て回ることはできなかったからエラそうなことは言えないけれど…

かかって来い、現代アート!

現代アート、超入門! (集英社新書 484F)作者: 藤田令伊出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/03/17メディア: 新書購入: 8人 クリック: 182回この商品を含むブログ (36件) を見るこの本は良書の部類に入ること、間違いないと思う。 具体的な作品を取り上げな…

アカデミズムへの反発

人間の美しい肉体を描くのにも「神話」とか「聖書」とかいう口実が必要だった時代から、綺麗なものを描くのにそんな権威なんか要らないじゃんと開き直って、純粋に裸体の美しさを表現するようになった時代への変化を見て取る、というのがこの展覧会の一つの…

美術に一歩近づくために

美術の核心 (文春新書)作者: 千住博出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/01メディア: 新書購入: 4人 クリック: 163回この商品を含むブログ (18件) を見る古今東西の美術に関して全部で23のトピックをたてて、作品鑑賞の勘所をやさしく説いた入門書。 取…