絵画と建築

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(当然と言えばそうなのだが)ル・コルビュジェの展覧会が行われている今回ほど、建物としての国立西洋美術館の魅力に気づかされることはこれまでなかった。西洋美術館が目的地でないにしても、その前を通って都立美術館に行ったり、奏楽堂に行ったり、つまり上野に行けば必ずと言っていいほど西洋美術館の姿を目にするわけだが、しばらく立ち止まってうっとりと見つめる、などということにはならない。強くアピールしてくる要素をその外観から感じることはないのだ。しかし、今回、コルビュジェ(ジャンヌレ)の絵やローランス、リプシッツの彫刻などが展示された室内を一回り巡ったところで思ったのは、個々の作品の面白さということだけでなく、それを包み込む空間の魅力的であることだった。これらの作品を、想像の中で僕の知っている他の美術館に並べてみる。例えば、東京ステーション・ギャラリーはどうだろう。あそこで観たモランディは良かった。今回のコルビュジェの絵の中にはモランディの静物画を思い出させるものがあったが、展示するのはやはり西洋美術館だろう。額縁が絵の印象を大きく変えるように、作品はその置かれた場所により、その魅力を十分に発揮できたりできなかったりする。
美術館を好まなかったというヴァレリーがこの展覧会を観たら、どう思っただろう。

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