非日常の読書空間

タイトルに惹かれてすぐ読み始め、機知に富んだ文章に魅了されてすぐに読み終えた。面白い! 本を快適に読む空間の確保というのは、本好きにとって重大問題なのだ。

僕たちには本を読むための場所が与えられていない。読むことはできるかもしれないが全面的な歓迎を明示してくれる場所は、ほぼ与えられていない。

そのとおりだと思う。図書館にしても、喫茶店にしても、カフェにしても、長時間ひたすら読書に没頭する場所として作られてはいない。本を読む人は、どうしてもそこでは居心地の悪さを感じてしまう。著者は「今日はがっつり本を読んじゃうぞ~」と思っている人が快適に読書の時間を過ごすための「最高の環境」を提供すべく、「フヅクエ」という店を作った。素敵なアイデアだと思う。こんな店が近くにあったら、ぜひ行ってみたいと思う。

でも…と思う。もし僕の生活圏(仕事の帰りに寄れる所とか、車で2、30分で行ける場所とか)にフヅクエがあったとして、実際どれくらい利用するだろうか。たとえば、コーヒー2杯(700円×2)とケーキ(500円)で、計1,900円。それで2時間半の快適な読書時間を買えるのだとしたら、ウーン、確かに高すぎる金額ではないけれど、気軽に何度も利用できる金額でもない。著者も言う通り、ここで過ごす時間というのは、たとえば仕事を頑張った自分への特別なご褒美なのである。フヅクエは「デイリーユース」を想定した場ではない。つまりそこは、非日常の空間ということになる。

そうなると…と思う。読書というのは、月に何回とか、年に何回とかいう特別なイベントではなく、ほぼ毎日の、食事をしたり風呂に入ったりと同じ行為、つまりは日常生活の一部なのだ。その日常としての読書を快適に行える空間の発見・創造こそ、生活の質に関わる重大事ということにならないか?