涙腺崩壊?(高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ⑤)

これも勤務校の図書館報に生徒による紹介記事が載っていた本。

濁音とカ行、タ行を必ずどもってしまう、不格好な村内先生が、心を病む生徒に寄り添って大切なことを伝えることで、状況を好転させるという話を並べた短編集。
僕が買った文庫本の帯には「涙腺キラー・重松清」「先生が選ぶ最泣の一冊」「100%涙腺崩壊!」「先生泣き№1」と威勢のいい文句が並ぶ。これだけ書いておいて泣けなかったとしたら、出版社の詐欺か? いや、泣けない読者の方が変なのか?
さて、僕はどうだったか。1話目、「ハンカチ」の最後の方の卒業式の場面、生徒が「村内先生、呼んでください」と叫ぶところで、思いがけず鼻の奥がつんと刺激された。おっ、ここでさっそく来たか、と思った。たしかにいい話だ。村内先生の存在感がどんと迫って来る。
この後も、同じ村内先生の登場する「いい話」が続く。全8話。どれも良く書けていると思う。教師のあるべき姿についても考えさせられる。しかし、「涙腺崩壊」というほどのことはなかった。最後の「カッコウの巣」では、「てっちゃん」が村内先生に心変わりさせられ、村内先生に惹かれていくプロセスに強引さを感じてしまったことは否めない。泣かせようという意図が透けて見える、とまで言ったら言い過ぎか。