嘘発見器

清水町先生 (ちくま文庫)

清水町先生 (ちくま文庫)

  • 作者:小沼 丹
  • 発売日: 1997/06/01
  • メディア: 文庫
 

 小沼丹が終生の師と慕った清水町先生、すなわち井伏鱒二の、人と作品について愛情を込めて綴った随筆集。井伏鱒二の作品理解への最良の手引きであると同時に、小沼丹の井伏譲りの軽妙洒脱な文章を楽しめる一冊。久々に井伏の作品を読みたい、小沼丹の文章をもっと読んでみたいと、他の本に手が伸びること請け合い。(…と書いてきて、型通りの言い回しに我ながら恥ずかしくなる。井伏はこういう文章は書かない。)

某日、井伏さんが病院で心臓の検査をして貰つたことがあつた。心電図をとることになつて、身体のあちこちに電極とか云ふ黒い吸盤みたいなものを附けられた。それを附けられたら、井伏さんは、
――嘘発見器ですか?
と医者だか看護婦に訊いたのださうである。 (解説「現代の随想」)

  電車の中でここを読んでいて、思わず吹き出してしまったが、幸いマスクをしていたのでごまかすことが出来た。