モランディ展

 東京ステーションギャラリーで行われている「ジョルジョ・モランディ〜終わりなき変奏」を観てきた。
 年譜によれば、モランディという人は昨日取り上げた3人の作家たちのような起伏に富んだ人生を送った人ではない。53歳の時、ファシスト体制に反対する運動家との交友関係を理由に逮捕された一件を除けば、平穏な生涯を送った人と言えるだろう。しかし、波乱にとんだ人生のみが、偉大な芸術を生み出すわけではない。モランディは、その人生同様、穏やかな作風ながら、揺らぎない信念のもとで作品を生み出し続けたことで、20世紀最高の静物画家との評価を得るに至った。
 会場には、同じ器類を同じように並べ、同じような色調で描いた作品がいくつも並ぶが、それらが与える印象は、決して退屈さなどではなく、むしろ深い安らぎのようなものだ。どうしてこのような同じ主題を繰り返し描いたかという知的な興味をそそられることも確かだが、理屈抜きで作品の一つ一つが観る者に絵を見ることの心地よさを感じさせる。落ち着きのある色と形、そして絵の質感が、目を楽しませるのだ。これらの作品群には、もっとも純粋な意味での絵画というものの存在価値が凝縮されているような気がする。
 東京ステーション・ギャラリーは、モランディの作品を並べるのにこれほどふさわしい場が他にあるだろうかと思わせるくらい、今回の展覧会にはうってつけの会場だ。古びた煉瓦の赤黒い壁面がモランディの渋い画面と調和して、魅惑的な空間を生み出していた。