現代美術の諸問題をめぐる思考


池田満寿夫『模倣と創造』中公新書)は、現代美術とそれを取り巻くさまざまな営みの意味について問いかける。

模倣と影響はどう違うのか?
芸術は現実を変えうるか?
文章書くことと絵を書くことの違いは?
批評とは何か?
そもそも「見る」とはどういうことか?
デュシャンが便器を展示した意図はなにか?

これら問いを、筆者はとことん思考する。その思考の先にあるものは、答えというよりはむしろさらなる「問い」である。現代美術を深く理解しようとすれば、人は誰でもそういう過程をたどらざるを得ないのではないか。なぜなら現代美術そのものが、答えの出ない思考実験の連続だからだ。
この本を面白く感じながら読み終えた読者は、芸術について、さらに「問い」を深めていきたいと望むだろう。
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今日、仕事で近くまで行ったので、帰りに黄金町アートブックバザールに寄った。ここは主に美術関係の古本を集めた、ちょっとしゃれた店。京浜急行の線路下にあって、頭上ではひっきりなしに電車の走る音がする。

池田満寿夫の著作は見つからなかったが、『模倣と創造』の中で再三取り上げられているデュシャンを特集した芸術新潮のバックナンバーがあったので買って来た。デュシャンの概略を知るのに格好の、面白い本だ。

ちなみに、『模倣と創造』は、この夏に行った小樽文学館の中の、誰でも自由に持ち帰れる古本のコーナーにあったもので、志として100円だけ置いてきたのだが、後で調べてみたら、何千円もの値段をつけている古本屋もあるようだ。