感動を伝える「型」

10月25日というのは、ちょっと待ち遠しく思っていた日でした。
『俳句界』11月号の投句欄に、ひょっとして僕の俳句が大きな活字で載っているかも、という期待があったからなのですが、えてして自信作というのは他人から見ればたいしたことのないものなのであって、今回も僕の「自信作」は加古宗也選の佳作の一つとして小さく載っているだけでした。
ところが、これもありがちなことなのですが、自分ではさほどとも思わなかった作品が意外と健闘していたのです。


遠泳のかたまりのまま折り返す


を六人の選者のうちのお二人が秀逸に、別のお二人が佳作に選んでくださっていました。(これはこの夏、千葉の岩井の海水浴場で見たままを句にしたものです。)
それよりもっと意外で嬉しかったのは、辻桃子がレフェリーをつとめる「俳句ボクシング」欄で、


刈り取りし草に混じれる蛇の殻


が、決勝まで勝ちのぼっていたことです。(惜しくもチャンピオンは逃しましたが…)。これは総合学習の時間に生徒と一緒に田植をした田んぼの草取りをした体験がもとになってできた句です。俳句としては新味に乏しいかなと思っていたのですが、思いのほかの評価をいただいてしまいました。ところが辻桃子の講評を読むと、これがなかなか厳しい。

「刈り取りし」の句。このままの型では、「縁起の良い蛇の抜け殻」を思いがけず発見した驚きが伝わらない。「…が…して…でした」というのは作文型。「まず結論を言い切ってしまう」が俳句型。倒置や省略、切れ字を使って、『蛇の殻』を強調する型にすると良い。説明を省き、思わず「おや、まあ」と声をあげてしまうような句の型を工夫して。

拙句について、これほど多くの字数を費やしてアドバイスをいただけるとは、とてもラッキーです。で、さっそく「刈り取りし」はどのように直したらよいのか、いろいろ考えてみたのですが、うーん、なかなか難しいですね。大切なのは感動を伝えるための「型」を会得すること、そのためにはもっともっと精進を続けなければ…
ところで、最初に書いた「自信作」というのは、これも岩井海岸での経験をもとにして作ったもので、


遠泳の先頭砂をつかみ立つ


という句です。自分では「特選がねらえる!」って思ったくらい気に入ってたんですけどねえ、やはりこれもプロの目から見たら問題があるということなんでしょう。この句についても感動を伝えるための「型」を工夫せよということなのかもしれません。

俳句界 2007年 11月号 [雑誌]

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