寺田寅彦を読みたくなったときは、『寺田寅彦随筆集』(岩波文庫)の目次のページを開いて、面白そうだと思ったタイトルの文章を拾い読みする。俳句関係の文章はだいたい読んだつもりだったが、今日読んだ「夏目漱石先生の追憶」と題された文章の中に、こんなくだりがあった。
寺田寅彦が熊本第五高等学校在学中、所用があって、初めて漱石宅を訪ねたときのこと。
…雑談の末に、自分は「俳句とはいったいどんなものですか」という世にも愚劣な質問を持ち出した。(中略)その時に先生の答えたことの要領が今でもはっきりと印象に残っている。「俳句はレトリックの煎じ詰めたものである。」「扇のかなめのような集注点を指摘し描写して、それから放散する連想の世界を暗示するものである。」「花が散って雪のようだといったような常套的な描写を月並みという。」「秋風や白木の弓につる張らんといったような句は佳い句である。」…
これをきっかけに俳句に熱中するようになった寅彦は、自作の句を添削してもらうため、「恋人にでも会いに行くような心持ち」で漱石宅に通うようになる。漱石が自分の句と一緒に寅彦の句も子規の所に送り、子規がそれを添削して送り返してくれたこともあったという。何ともうらやましい話ではないですか!
寺田寅彦はどんな句を作ったのか。「増殖する俳句歳時記」には、
藁屋根に鶏鳴く柿の落葉かな
など、八句が取り上げられている。
- 作者: 寺田寅彦,小宮豊隆
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1963/01/01
- メディア: 文庫
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