宿題やらなきゃ

mf-fagott2009-11-24藤田湘子『新20週俳句入門』は、読者に宿題を出す。宿題をやらなければ先に進んではいけないことになっている。
最初の宿題は

季語(名詞)や+中七+名詞

という型(これを本書では〔型・その1〕と呼ぶ)で2句作れ、というもの。お手本は、
明月や男がつくる手打そば  森澄雄
この型の句は、僕も最近いくつか作っている。たとえばこんな句。
六月やバケツを鳴らす牛の乳(『俳句』に投稿して、没)
秋天や大工の口からつぎつぎ釘(句会にて、無得点)
藤田湘子に見せたら「秋天や」は字余りだから不可と言われるのは確かだけれど、とにかくこれで宿題はやったことにして次に進んでしまう。(高校生の中にもいます、中学の時に読んだ本で読書感想文を書いて出すヤツが。)
次の宿題は

上五+中七(〜や)+季語(名詞)

の型で作れというもの。(これを〔型・その2〕と呼ぶ。)お手本は、
寄せ書の灯を吹く風や雨蛙  渡辺水巴
今回もまた以前作った句でごまかそうと思ったのだけれど、僕はどうもこの型の句を作ったことがないらしく、見つからない。それでは作ってみようといろいろ考えてみたのだけれど、これが意外と難しいのですね。
ラー油浮く担担麺や冬麗(横浜西口地下の中華料理屋「龍味」にて。どうでもいいけど。)
情けないことに、こんなのしか出来ない。それで、参考にしようと思って、この型の句をたくさん作っていそうな長谷川櫂と岸本尚毅の句集を開いてみた。そうしたら、ぞろそろ出てくるんですよ、この型の句が。


前掛の板のごとしや椿餅
竹山の声つつぬけや春夕焼
村雨に打たれし草や走馬灯
あふらるる辛夷の花や啄木忌
朱みさす加賀の柱や鰤起 
  (以上、長谷川櫂『天球』より)


戸が閉まる大きな音や麦の秋
置かれある身欠鰊や虫の宿
夜空よりどすんと雷や花菖蒲
飯場にてみんな裸や秋の暮
音もなく歩くお方や城の秋
  (以上、岸本尚毅『瞬』より)


半分ほど読み進んだだけで、苦もなくたくさんのお手本が集まってしまった。さて、僕も頑張らないと。

(ちなみに、正木ゆう子『静かな水』にもざっと目を通してみたけれど、〔型・その2〕の句は4句だけ。
敏感な秤の発条や小鳥来る
など。藤田湘子は、この型は「古臭い」がゆえに「敬遠されているふしも見られる」と言っている。この型の句を多く作るか否かは、その俳人の作風を反映しているように思う。)
■追記(11/28)
これまでに〔型・その2〕の句を作ったことがないと書いたけれど、かつてこんな句を作っていたのをあとから思い出した。
まだ鳴らぬ着信音や遠花火