逢えない嘆き

大岡信の『第五 折々のうた』を読んでいる。

高山ゆ出で来る水の岩に触れ破れてそ思ふ妹に逢はぬ夜は   詠み人知らず

大岡信はこれを、これよりもずっと後に詠まれた、

瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ   崇徳院

と「同種類の発想の歌である」と解説するが、僕は

風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな   源重之

を思い浮かべてしまった。川と海の違いはあるけれど。ちなみに、「風をいたみ…」の歌を僕が現代短歌風に現代語訳すると、「風に飛び岩に砕ける荒波は俺の心だお前が好きだ」となる。