歴史としての現代短歌

1953年、斎藤茂吉の死を起点に、93年の中井英夫の死まで、戦後の短歌がどのように「現代短歌」として生きようとこころみたのか、その歴史を記述しようとするこころみ。その期間、重要な働きをした歌人たちと編集者(中井英夫)にぐっと近寄ってその言動を活写することで、それぞれの人物像を浮かび上がらせるとともに、互いの関係に目配りすることで、ひとつの歴史として現代短歌をとらえることに成功している。「歴史」は記述されて初めてこの世に存在し得るという当然のことが、文学史についてもあてはまることを実感させてくれる本である。

またこれは、短歌の世界の外に身を置く、関川夏央という一読者の、短歌受容史としても興味深い。