どっち派?(高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ①)

高校生に人気のある住野よるの作品を初めて読んだ。

よるのばけもの   /双葉社/住野よる

主人公のあっちーくん(安達くん)は分裂している。 

クラスの大多数が向かっている方向(矢野さんへのいじめ)からずれないように(孤立しないように)、細心の注意を怠らずふるまう昼のあっちーくんと、ばけものの姿をしているが、思いやりを持って矢野さんと向き合う夜のあっちーくん。 

矢野さんから「人間の姿派? 今のその姿、派?」と問われて答えが出せない。どっちが本物の自分なのか? 

読者は相反する二面性を抱えて悩むあっちーくんに共感を覚えるのではないだろうか。自分の中にも二人のあっちー君がいる、と。 

最後の場面。だれもが無視する矢野さんに、あっちーくんが「おはよ、う」とあいさつを返す場面。唖然とするクラスのみんなは、あっちーくんの中にばけものを見出しただろうか? そのばけものがクラスに新しい風を吹き込むことを予感させて、物語は閉じる。 

よるのばけもの (双葉文庫)