図書室の改造

 紹介するほどの内容の本ではないのだが、印象に残ったエピソードが一つある。
 著者である藤原和博氏が杉並区立の和田中学の校長に就任したときに行った、図書室の改造だ。
 当時図書室にあった9000冊の本のうち、5000冊の本を捨てた。「生徒が足を運びたくなる魅力的な図書室にしたいと思うなら、まずは不要な本を捨てるところから始めなければならない」と考えたからだ。
 「スカスカ」になった棚に、本を表紙が見えるように置いたことと、空いたスペースを活かして、じゅうたんを敷いてパーティションで仕切り、寝転がれるようにした四畳半の「死角」を設けたことで、図書室の利用者は10倍以上に増えたそうだ。
 本を処分することも、「死角」を設けることも、職員の反対にあったようだが、それをあえてやってのけてしまうとは、著者はやはり並の人物ではない。僕がもしこの学校の職員だったら、こんな校長の学校運営には反発してしまうような気がする。暗くて黴臭くて近づきがたい一角があるというのも、学校の魅力の一つのように感じるからだ。
 しかし、とにかく利用者が10倍に増えたのだから、この改造は成功だったことになる。この和田中学校の図書室改造のいきさつは、武雄市TSUTAYA図書館の話と通じるものがある。全国にTSUTAYA図書館は増えつつあるようだが、和田中学校の真似をして、本を大胆に捨てる動きが広がっているのかどうかは、知らない。