- 作者: 幸田文,川口松太郎,高浜虚子
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/10/12
- メディア: 文庫
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図書室に入っているのは現在50冊。今年中には100冊が揃うらしい。どんなテーマでどんな作品が収められるのか、興味深い。
で、まずは第5巻「音」を借りて読んでみた。
これを選んだのは理由があって、高浜虚子の散文を読んでみようかと思っていたところに、ちょうど「斑鳩物語」という文章を載せたこの本が眼についたからだが、読み終わって一番印象に残ったのは川口松太郎の「深川の鈴」という文章だった。味があって、色気があって、切ない余韻が残る。川口松太郎は第一回の直木賞受賞者だそうだが、読んだのは初めてだ。掘り出せばこういう名文はきっといくらでも出てくるんだろうから、最近の話題作なんかにあわてて飛びつくことはないんだよな。
それにしても、「音」というテーマでこの三篇を並べた編集者のセンスはなかなかのものだと思う。どの作品中の音も、人の暮らしがたてる音だ。人はそれぞれの人生の中で、それぞれの音を発する。その音に注意深く耳を傾ける人がいる。現代のように、大音量の洪水の中で人の耳が麻痺してしまう前の話だ。