「刺身」と「死んだ魚」

15歳の寺子屋 15歳の日本語上達法

15歳の寺子屋 15歳の日本語上達法

今度の新入生に紹介するのに、これはなかなかいい本だと思った。
著者は、人間は言葉で認識するということを、こんな例で説明する。

「刺身」と「死んだ魚」は表現の仕方は違っても同じもののはずです。なのに「刺身」と聞くと人は食欲をそそられ、「死んだ魚」と言われると食欲がなくなってしまう。「活きのいい刺身」はうまそうなのに、「死んだばかりの魚」と言いかえると、人は食欲が失せるばかりか、魚がかわいそうになったり、なんとなく不衛生な感じがしたりする。

池上彰も前回取り上げた本の中で言っていたけれど、テレビの世界で生き残れる人は、それなりに優れた言語能力を持っている。金田一秀穂がよくテレビに登場するのも、こうしたわかりやすい説明ができる人だからだろう。この本を読めば、なぜ日本語を勉強する必要があるのか、生徒も納得するだろう。
意外だったのは、金田一秀穂の経歴。大学卒業後もなかなか目標が見つからずに3年間ニート(パチンコ屋通い!)を続け、日本語教師として初めて給料をもらったのは30歳のときだそうだ。だからこんな発言にも説得力がある。

もし、みなさんが将来に不安があったり、目的が見つからないというなら、「三十歳までに一人前になればいいんだ」ぐらいの余裕を持って、自分の人生を歩んでいったほうがいいと思います。現にぼくみたいにゆっくり大人になっていった人間だっているんですから。

僕が担任をしているクラスに、卒業後の目標が見つからずにかなりあせっている生徒が二人いる。二人にもこの本を読むように勧めてみようかな。