まあまあ、そこそこ(高校生に人気のある作家を読んでみるシリーズ④)

山田悠介は初めて読む作家で、まったく知識は持ち合わせていないが、高校生には人気があるらしい。アマゾンの「商品の説明」中には「10代を中心に圧倒的な支持を得る」とある。
僕が中古店で買った文芸社文庫(2016年発行)の帯には「いま最も泣ける最新作」というキャッチコピーが大きく印刷してある。「泣ける」というからにはそれなりに深みや味わいのある作品なのだろう、と期待して読み始めたが、登場人物の思考と行動の単純さに最初からついていけない。泣ける場面はきっと最後の方に出てくるのだろうと辛抱して読み進めたが、涙もろい僕でも最後まで涙腺の弛むことはなかった。ただ、ストーリーはまあまあの出来でそこそこ楽しめたし、不幸な事件は起きるものの、読後感が爽やかなのが良かった。
それにしても、「圧倒的な支持を得る」作家がこの程度であるとは思えない。山田悠介に詳しい高校生だったら、『93番目のキミ』は不出来な作品で、もっとおススメなのは別にあるよ、と言うかもしれない。