山田ズーニーは『伝わる・揺さぶる!文章を書く』の中で、文章表現の上級テクニックの一つとして、「思考停止ポイントを発見する」ことを勧めている。
著者は新米編集者だったころ、貰った原稿に対して「素晴らしい」を連発していたという。
しかししばらくして、自分にボキャブラリーがないために「素晴らしい」に逃げていることに気がついた。
そこで私は、自分に「素晴らしい」使用禁止令を出した。
「素晴らしい」という形容詞が使えないのは、ものすごく苦しいことだった。それにより、いつも以上に時間をかけて原稿をよく読むことが必要になった。どこに魅力があるか? なぜ魅力があるか? それをどういう言葉で表現するか? そういったことを、普段いかに考えてこなかったかがわかった。
「素晴らしい」が私の思考停止ポイントだったのだ。
高校生の作文を読んでいて、しばしば感じるのが、彼らが「すごい」という言葉でなんでも片づけてしまうことだ。
「この人の書く小説はどれもすごいと思う。」
「強豪スペインを破った日本チームはすごいと思った。」
というような具合だ。僕は、赤ペンで「どういう点がすごいと思いますか?」などと書き込む。「すごい」をもっと具体的な言葉で表現する努力をしてほしい。もっと深く考えてほしいのだ。「すごい」が思考停止ポイントになってしまっている高校生は多い。いや、大人の書き手の中にも「すごい」で片づけてしまう人はいる。もっと適切な言葉を使いたくても思いつかず、止むなく「すごい」でお茶を濁しているというケースもあるだろう。
僕も「すごい」は極力使わないように心がけているけれど、全く使ったことがないとは言いきれない。
- 作者: 山田ズーニー
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