善意の人びと


現代文の教科書に載っていた「待合室」が、授業でとりあげてみたら思った以上にいい教材だった、という話をしたら、もと同僚のTさんが、内海隆一郎はいいよ、僕は好きだよ、と言うので、僕も読んでみた。
こういう善意に満ちた人々の登場する小説を読んでいると、村上春樹が「小説が基本的に求めているのは、人々の魂の、安全な(少なくとも危険ではない)場所への、自然なソフト・ランディングです。」と言っていたのはこういうことなのかな、と思う。人間への信頼感と、現実への肯定的な感情を取り戻すには、こういう小説を読めばいい。心が洗われるというありきたりな表現が、この小説にはしっくり当てはまる。
「木綿豆腐」も高校の教科書に載ったことがあるそうだが、僕が一番生徒に読ませてみたいと思ったのは、「天ぷらそば」。「どうして?」と先を読みたくなる展開。きっと生徒も引き込まれて最後まで一気に読んでしまうだろう。