望む、復刊!

10年ほど前に出た本なのですが、つい買いそびれてしまって今では到底手に入りそうもなく、ここ数年は秋になるたびにちょっと悔しい気持ちになる、そんな本があります。
角川mini文庫『今はじめる人のための俳句歳時記』全五冊の内の、秋だけが欠けてしまっているのです。

この角川mini文庫というのは、新書をちょうど半分にした大きさで、ページは130ページ弱。これだけ小さいとシャツの胸のポケットに入れておいて、スキあらばサッと取り出して盗み見てまたすぐに隠してしまう、という使い方ができるので、時と場合によってはとても重宝なのです。
もちろん、普通の文庫サイズの歳時記に比べたら収録季語数はかなり少なくて、これだけ持っていれば事足りる、というようなモノではありませんが。
例えば、『角川春樹編 現代俳句歳時記 春』(ハルキ文庫)の索引のページを開いてア行を比べてみると、ハルキ文庫に載っている「あおき(石蓴)」「あおぬた(青饅)」「あざみ(薊)」「あずまおどり(東踊)」が、mini文庫の方には載っていない、という具合です。しかし、「あざみ」が削られたのはちょっと惜しいとしても、それ以外の季語は、まあ僕にとっては一生使いそうもない季語です。
だいたい一般的な歳時記の中には、俳句を作るという立場から言えば(少なくとも僕のような素人にとっては)必要なさそうな季語がかなり収録されていて、その分やたらとページ数が多くなっています。その点、mini文庫の方は、現代生活の中でも普通に使われる語に絞られているので親しみやすいと言えます。
また、現代人の感性でもわかりやすい例句が多いのも魅力です。
例えば、まだちょっと季節外れですが(なにしろ秋の部を持っていないので)冬の句の例を挙げれば、


立冬や窓に始まる雨の音  岩田由美
逢ひたさのつのりて銀河凍つるかな 藺草慶子
霜柱軽い気持ちで喫茶店  筑紫磐井
雪降るとラジオが告げてゐる酒場  清水哲男
毛布にてわが子二頭を捕鯨せり  辻田克巳



という具合です。こういう句を読むと、自分でも俳句を作ってみたくなります。
そこで角川書店さんにお願いです。どうかmini文庫版の俳句歳時記を復刊させてください、「秋」の部だけでもいいですから!


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