くらべうま

mf-fagott2010-06-01生まれて初めて、競馬を見てきた。
日本ダービーというやつで、府中の東京競馬場は人があふれていた。
つまり、一昨日の話。
競馬には特別興味はなく、ギャンブルにはむしろ無関心な方だが、息子が行くと言うので、付き合ってみよう、というか連れて行ってもらおうと思ったのだ。たまには知らない世界を覗いてみるのもいいもんだ。俳句の材料も転がっているかもしれないので、一応鞄には歳時記と句帖も入れて行く…
ところが、いつものことだけれど、現場に行ってしまうと俳句の「は」の字も思い出さない。着いていきなり生ビールで(これはスポーツ観戦の一番の楽しみだからね)、自分の買った馬が調子がいいと、「行け! 行け!」なんて、自分でも思いがけず喉を嗄らしている。
そんなわけで、久々に息子とも会話ができたし、いまどきの競馬場は若い女の子が結構大勢いる、というふうに世の中のことも少しわかったりしてなかなか有意義ではあったのだけれど、俳句の方はいまだにできない。
歳時記に出ている「競馬」は、陰暦5月5日に行われた京都上賀茂神社賀茂競馬のことで、それは「二十人の騎手が左右に分かれ、左右一騎ごとに競う」(角川春樹編『現代俳句歳時記』)のだそうだけれど、例句をみると、どうもこれは賀茂競馬ではなくて十数騎が一斉に走る現代の競馬を詠んでいるとしか思われない。
くらべ馬おくれし一騎あはれなり   正岡子規
負馬の眼のまじまじと人を視る    飯田蛇笏

どうやら勝った馬より負けた馬の方が句材になりやすいらしい。今度行く時は、負馬を俳人の眼でつくづく観察してみよう、なんて書いちゃって大丈夫かな。実際行けばまた生ビール飲んで、にわかギャンブラーになってしまうにちがいないんだから。