やはり全国紙に載せるということになると、俳人も気合の入れ方が違ってくるのでしょうか、以前から「朝日新聞」の夕刊の文化芸能欄に発表される俳句にはいいものが多いなあと思っていました。
昨日の夕刊には小沢實の「薬罐」と題された十句が載っていました。どの句もいいのですが、中でも僕が好きなのは次の三句。
ひともとの芹流れ来ぬ根もついて
梅咲くや湯気の底なる一蒸籠
水入れて薬罐くもりぬ桃の花
もう2年前になりますが、やはりこの欄で高柳克弘という人の句を読んで、鋭い感性を持った人だなあと驚いたのですが、「80年生まれ」とあるのを見てもう一度びっくり。20代でも才能のある人はこういう句を作るのかとちょっと嫉妬したものです。その新聞は切り抜いて取ってあります。
蟻穴を出て試験管のぼりけり
春暁の羽音やギリシヤ神話読む
地下を出て地上の冥し沈丁花
ストローの向き変はりたる春の風
ぶらんこも風の欅もしづもりぬ
さらに前、辻美奈子の次の句も朝日の夕刊で見つけたのでした。
大樹いま水さかのぼる立夏かな
みどり児に喃語湧きつぐ新樹の夜
まんぼうの横向きに来る薄暑なり
このとき以来、朝日の夕刊に載る俳句は見落とさないように注意してきましたが、魅力的な句が見つかる確率が高いということは断言してもいいと思います。
『俳句界』3月号には、井川博年という詩人が「俳人が多すぎる」という文章の中で、次のように書いています。
結社と一部の出版社が支配する俳壇はかなり重症のビョウキである。嘘だと思ったら「俳句」「俳句研究」「俳壇」「俳句四季」を見てご覧なさい。何処に俳句が有るのですか。何処に俳人が居るのですか。私はこれらの雑誌が送られてくると(全部ではないが)、真っ先に巻頭から有名俳人のいい句を拾おうと目を皿にして探すのだが、コレはッというのが、十頁に一句もない。当たり前の話で、毎月百人からの俳句作者が十句以上発表して千句である。年に一万句の俳句が出来ているのだ。俳句の大量生産である。
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『俳句界』は編集長が詩人の清水哲男に代わって、4月号から誌面を一新するとのこと。判型もコンパクトになるそうです。
俳句も料理と同じ、量は少なくていいから美味しいものを食べたい。清水編集長、期待しています!!