山の名文家

 山の雑誌の編集にも携わったという著者による、山の随筆集。山を語る名文家と言えば、まず深田久弥、続いて串田孫一辻まこと畦地梅太郎などを思い浮かべるが、この若菜晃子もその中に加えよう。

「木村さん」と題された文章は、山の随筆というよりは、短編小説のように読者を惹きこむ名品。「私」の心の繊細な動きを追って、しみじみとした深い余韻を残す。この著者、小説家としての才能も感じさせる。