30年前に出会っていれば…

 アクティブ・ラーニングはどのような時代の流れの中で提起されるに至ったか、今アクティブ・ラーニングを行うことの意義はどこにあるのか、アクティブ・ラーニングには具体的にどのような技法があるのか、それをどのように導入していけば良いのか…

 アクティブ・ラーニングについての理解を深め、実践へと導いてくれる、良書。「はじめに」で著者は「本書は、必ずしも教育を専門としない人々を読者対象に想定している」と言っているが、この本はチョーク&トークのスタイルから抜け出すことのできない教師こそが読むべき本ではないか。僕はたくさんの実践的なヒントをこの本から得ることができた。30年早く出会いたかった本。

アクティブ・ラーニングとは何か (岩波新書)

アクティブ・ラーニングとは何か (岩波新書)

  • 作者:淳, 渡部
  • 発売日: 2020/01/23
  • メディア: 新書
 

知識はもちろん重要である。だが、知識の習得だけをゴールにするのではなく、集めた知識を活用して、自らの知を更新していくことのできる〝学び方"の習得も同時に進めていく必要がある。

アクティブ・ラーニングの定着につれて、教師の専門性も教師に求められる資質も、〝チョーク&トーク"全盛の時代とは変わっていかざるを得ない。
私は新しい教師像を「教師=学びの演出家」と呼んでいる。演出家としての教師に期待される役割は、学習者が潜在的に持っている可能性を洞察し、共同の学びの成果としてそれを顕在化することである。

アクティブ・ラーニングの経験は、そのまま参加型民主主義の運用経験に通じている。民主主義を構成する要素は、民主主義の思想であり、民主主義的制度であると同時に、理念を具現化するものとしての「手続きと運用」だからである。