マークシート式問題批判

論理的に考え、書く力 (光文社新書)

論理的に考え、書く力 (光文社新書)

  • 作者:芳沢 光雄
  • 発売日: 2013/11/15
  • メディア: 新書
 

  教育施策については慌ただしく動いており、その点では既に消費期限切れの本であるが、まあ、それはともかく、マークシート式問題を批判した次のような部分には共鳴できる。

「選択式」で問題を解き続けていても、「答えを当てる」ことに意識が向くだけで、「自らの頭で考え」「根本から理解する」力はつかない(中略)

 国語のマークシート式問題では「正解として不適当なものの排除」が本質的に重要となってしまう。国語のマークシート式問題の解放を学んだことがある高校生なら、「断定的に言い切っている選択肢は、正解になる可能性が極めて低い」という〝格言"はよく知っている。(中略)

このような格言やテクニックを駆使してマークシート形式の問題が解けるようになる学びに膨大な時間を費やすことは、果たしてどれだけの意義のあることだろうか。

  マークシート式問題のような形式の出題、つまり誤りを含む複数の選択肢の中から正解を選ばせる問題は、大学の個別入試でも一般的だし、高校の普段の定期試験の中でも頻出する。これを解くときの頭の使い方は、いわゆる「脳トレ」によくある、左右の絵を見比べて間違いを探す、あれとよく似ている。左の絵では子供が水玉模様の服を着ているが、右の絵では同じ子供が縞柄の服を着ている、そんな違いを見つけることを、文章の上でやるのだ。文章を注意深く読むという訓練にはなるに違いないが、こうした問題ばかりでは本物の読解力はつかないだろう。もちろん、センター試験には文章の構成、表現などに関わる設問も用意され、全体としてはそれなりによくできた問題となっているし、個別入試問題においても、記述式問題を取り入れる工夫をしている大学はある。しかし、まだまだマークシート式問題の占める割合は多く、授業の中でも〝格言"などもちりばめながら、そうした問題への対応にそこそこの時間を割かざるを得ない、というのが現状だ。