文化人?

 吉本興行のWeb Siteが面白いから、ぜひ覗いて見てください。
 タレント検索という機能があって、吉本興行所属のタレントの実績や趣味などを調べることができる。面白いのは、そのタレントたちが、「芸人」、「落語家」、「文化人」、「スポーツ選手」などという種別に分類されていることだ。
 文化人?
 いったいどんな文化人がいるんだろうかと一覧を見てみると、知っている名前はごくわずか。テレビで何度か見たことのある、エド・はるみという女性は、お笑い芸人かと思っていたけど、いやいや、「文化人」なのでした。パソコンや接客マナーの講師をやっていたからか?
 森田 正光。この人は天気予報番組のキャスターをしていたから、文化人に入るのはわかる。気象に関する本も書いている。でも、特技が「天気予報」になっているのには違和感を感じる。プロ野球の選手が「特技は野球です」って、言うかなあ…
 もう一つだけ、「文化人」の中に見覚えのある名前が見つかった。松沢よしふみ。神奈川県知事でいらっしゃった時代もあった。でも、なぜか経歴欄ではそのことには一切触れられていない。『私が吉本に入った本当の理由』という本も書いているらしい。
 僕が吉本興業のWeb Siteを開いてみたのは、又吉直樹のことを調べようと思ったからだ。又吉直樹こそ、文化人に分類されていてもおかしくないと思うのだけど、やはり芸人の中に、ピースのメンバーとして、もう一人の綾部祐二と並んで紹介されている。この先、どんなに著作の方が忙しくなっても、彼は芸人であることはやめないだろう。『花火』を読んでも、『夜を乗り越える』を読んでも、彼の芸と読書は分かちがたく結びついているらしいことを感じる。日本人は牛乳を飲んでもそこから体に有益なカルシウムを摂取することが西洋人ほどにはうまくできない体質だということをどこかで聞いたことがあるが、又吉直樹という人は、読書から有益なものを摂取し、それを芸(=表現)に生かすことにかけては天才的な能力を持つのではないか。どんなにたくさん読んでも、だれもが『夜を乗り越える』のような本が書けるわけではないだろう。