今日から後期授業。

まずは黒板に


ゴマだれで幕を開けた


と書いて、「これ、どういうことだと思う?」と質問。
生徒たちの、いかにも困った顔。


「ゴマだれの瓶の蓋を開けた?」
「野菜サラダにゴマだれをかけて食べ始めた?」


なるほど。
「実はこれ、『ユリイカ』っていう詩の雑誌に載っていたんだけど、たぶんみんなが知っているこの人の俳句なんだよ。」
と言いながら、黒板に


又吉直樹


と書く。
「ピースの又吉、知ってる人は手を挙げて。あれ? みんな知らないの?」
最前列の真面目な男子生徒に「ほんとに知らないの?」って聞くと、
「知ってるけど、手を上げにくい…」

又吉って、そういうやつか。わかるような気もするけど。
そのほかにこんなのもあるよと、黒板に二句追加。


夕暮れだ逃げろ
また物真似されている



「こんなの俳句じゃないって思うかもしれないけど、教科書にもこんなのがあるよ。89ページを開けてごらん。」
そこにあるのは山頭火


うしろすがたのしぐれてゆくか


「こういうのは俳句というより一行詩って言った方がいいっていう意見もあるけどね。」
すると、さきほどの真面目な男子生徒がつぶやく。


「咳をしても一人」


「そう、よく知ってるね。それは尾崎放哉って人の句。又吉の句も同じようなものだと思わない?」
生徒、無反応。でも、めげずに又吉ネタで攻める。
黒板の「ゴマだれ」を消して、


(     )で幕を開けた


「では、今度はこの(    )の中に自分で言葉を考えて入れてみましょう。3分間で考えて提出!」
で、出てきた生徒作品。


「ゴングで幕を開けた」
「遅刻で幕を開けた」
「納豆で幕を開けた」


常識的だったり現実的だったりで、やはり「ゴマだれ」にはかなわないけど、まあこんなもんでしょう。
「なるほど、君たちの考えたのもなかなか面白い。はい、それじゃ前期に途中で終わった漢文の続きをやります。ノートを出して!」
こんな調子で僕の後期の授業は幕を開けたのであった。




■追記
翌日、別のクラスで同じ授業。
黒板に





まで書くと、生徒、
「又吉!」
「その通り、又吉直樹。ピースの又吉、知ってる人?」と聞くと、ほとんどの生徒が
「はーい!」
何なんだ、昨日のクラスとのこの違い。 ま、ありがちなことだけど。
で、出てきた生徒作品。


「このあたしで幕を開けた」
「初雪で幕を開けた」
「秋風で幕を開けた」
「髪の毛一本で幕を開けた」


うん、なかなかいい感じ。