語るべき青春

ライク・ア・ローリングストーン―俳句少年漂流記

ライク・ア・ローリングストーン―俳句少年漂流記

愉快、痛快。
自分の過去を語って、これほど人を楽しませることができるっていうのは羨ましい。
僕の青春時代なんて、人に語るほどのものじゃなかったなと思う。
この違いはどこから生まれるのか。
一つは時代。
僕もヘルメットかぶってスクラム組んで、機動隊と衝突して頭から血を流してみたかった、などとは思わない。でも、そんな過激な青春時代を語れる人に、一種の羨望を感じてしまうのは確かだ。
でも、もし僕が著者と同じ時代に生きていたとしても、同じように学生運動の渦中に飛び込むことはなかっただろう。あと7〜8年早く生まれていたとしても、僕の人生はそんなに大きくは違わなかったんじゃないかと思う。
個々人の生き方や考え方というのは、もちろん時代や地域に影響されつつも、持って生まれた性格によってかなりの程度まで決まってしまうのではないか。臆病な僕には、どんなに時代が後押ししても「アナキスト軍団」なんて書いたヘルメットかぶってデモに参加する勇気は出そうもない。
今井氏には、抜きん出た行動力と自信と才気があって、それを武器に難局を次々に乗り越える。たとえ学校の成績は振るわなくても、自分の側に幸運を引き寄せることのできる、凡人には得がたい才能が備わっているように見える。
そして愛すべきは、俳句についてもそれ以外のことについても、自分の信念を真っ直ぐに貫こうとする純粋さ。そして他人に(特に女の子に)見せる思いやり。人間としてのこんな魅力*1が、そのままこの本の魅力にもなっているんだと思う。
もちろんこの本は、著者の俳句観を知るよすがともなり得るという点でも興味深い。俳人としての今井聖を理解したいという読者の期待も裏切らないだろう(多分)。
この青春記は、27歳にして定職を得たところで終わってしまう。でも、今井聖の青春はこの先もまだまだ続くに違いない。加藤楸邨との付き合いもさらに深まっていくはずだ。それに、かなえちゃんとは結局それっきりになってしまったのか、というあたりもとても気になる。
ぜひ、続編が読みたい!!

*1:あくまでも僕が文章から得た印象です。ちなみに著者は脚本家でもあります。