僕が就活中の若者だったとしたら…

計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話

計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話

内田樹『街場の文体論』を読みながら、このミシマ社って出版社は聞いたことがないなあ、と思っていたら、たまたま何かでこの本の存在を知った。さっそく読んでみると、このミシマ社というのは、若い人がエイッと始めてしまったユニークな出版社で、小さいけれどもなかなかの頑張りを見せている会社なのだった。
僕は、椎名誠『銀座のカラス』あたりの自伝モノをふと思い出してしまった。出版社を始めた時のミシマさんの意識の中にも椎名誠のことは少しはあったんじゃないかなと想像してしまうのだが…
もし今、僕が就活中の若者だったとしたら、こういう会社で働きたいと真剣に思ったに違いない。そのくらい、この本からは、ミシマさんの人柄とミシマ社の職場としての魅力が伝わってくる。
それから、こういう出版社が頑張っているうちは、紙の本がなくなるなんていう悲しいことは起こらないだろうなあと思う。

出版というのは、テレビなどと比べると、きわめて小さなメディアではあるが、メディアであることに変わりはない。しかも、テレビなどと違い、唯一モノとして存在しているメディアだ。そしてモノである以上、一過性の要素は薄れ、時を超えることに、よりその本質があるといえる。たとえば、本棚に十年以上眠っていたある本を、ふとした拍子に偶然手にとると、そこに自分の人生を変える言葉が待っていた――。そういうところにもっとも本質を宿しているのが出版メディアであるが、…