「野ばら」で古文入門

「国語総合」の最初の授業で生徒一人一人に一年間の目標を立ててもらう。するとどのクラスにも少なからずいるのが、「古文が苦手なので頑張りたい」という生徒。おそらく中学の国語の授業で古文への苦手意識を持ち、高校入試でも古文の問題にてこずったのだろう。
駿台予備校講師である鳥光宏氏が高校生に対して行ったアンケート調査によると、高校生の古文に対する苦手意識が、国語という科目全体の苦手意識を押し上げていることがわかる。(『「古文」で身につく、ほんものの日本語』PHP新書)すると、古文を苦手と感じている高校生に、古文に親しんでもらい、苦手意識を解消させるというのが、教える側にとっての大切な課題ということになるだろう。
鳥光氏の言うように、シューベルトの歌曲「野ばら」の歌詞の文語訳などは、古文の格好の入門教材になると思う。(一番の歌詞だけでも、「清ら」「愛づ」「ながむ」「にほふ」など、重要古語が満載!)現在では「文語の歌詞は古めかしい」ということで小学校の音楽の教科書から消えたらしいが、こういう曲に、歌詞の意味などわからなくてもいいから子供のころに馴染んでおくと、それが高校での古文学習に生きると思う。百人一首なども、小中学生の柔軟な頭でどんどん覚えておくことは絶対に無駄にならない。
彼らの頭の中の歌詞や和歌を、高校の教科書の「古文」とうまく結び付けてやれれば、古文の授業はより効率的に進むはずだ。
今年は古文の時間に、シューベルトの「野ばら」を聴かせてみようかと思う。


(前掲書、178ページには「野ばら」の歌詞が次のように載っているけれど、「にほう」は、「におう」または「にほふ」と仮名遣いを統一すべきだろう。)
童は見たり 野なかの薔薇
清らに咲ける その色愛でつ
飽かずながむ
紅にほう 野なかの薔薇



「古文」で身につく、ほんものの日本語 (PHP新書)

「古文」で身につく、ほんものの日本語 (PHP新書)