表現の連鎖の面白さ

知ってる古文の知らない魅力 (講談社現代新書)

知ってる古文の知らない魅力 (講談社現代新書)

 

文学作品は、過去の作品表現の集積によって成り立っている。すぐれた作品はその上に新しい価値を付与したものだ。 

  あるいは、

すぐれた文学作品が生み出されると、それが新たな規範となって、後代の作品表現の形成に影響を及ぼす。 

 ということを、具体的な作品を取り上げながらわかりやすく説いている。例えば、『徒然草』の序文「つれづれなるままに…」は有名だが、それより前に書かれた作品の中に、こんなくだりがあることは知らなかった。

つれづれに侍るままに、よしなしごとども書きつくるなり。『堤中納言物語

つれづれのままによしなし物語、昔今のこと、語り聞かせ給ひしをり、…『讃岐典侍日記』

この本は、学習院大学での「日本文学史概説」での講義内容をそのまま書籍化したものだそうだ。高校の古文の授業は、細かい文法事項を突っつきながら、現代語訳を完成させることが中心になってしまい、そこまでで終わってしまいがちだが、本当はこういう授業ができると面白いのだろう。

もっとも、高校レベルでのそういう地道なお勉強という下敷きがあって、初めてこういう本を楽しめる、とも言えるのだろうが。