- 作者: 伊藤礼
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2005/12/14
- メディア: 単行本
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自分はあと何年自転車に乗れるだろう、スキーができるだろう、ファゴットが吹けるだろうとふと考える年齢に僕もなってしまった。しかし、こういう人がいることを知ると、そうか、まだまだやれるんじゃないかと勇気付けられる。でも、金もないのに、僕もぜひとももっといい自転車を買わねば、と強く思うようになってしまったのは、ちょっと困ったことかもしれない。
この本を読む人は、漕ぎ出したら、いや、読み出したら途中でやめるのは難しいということを覚悟しておいた方がいい。なにしろ文章が面白い。いや、面白すぎる。この人のユーモアのセンスは並大抵のものではないと思う。どのページを開いても、必ず可笑しなことが書いてあると言っても、さほど大げさではない。
「ヘリオスSL」を第三号車として買い入れたのは七月の上旬であったが、買い入れた段階において私は自己所有の自転車がすべて折り畳み自転車であることに気づき、なんとなく恥ずかしさを感じ始めた。全部が折り畳み自転車であるのは、所有者の性格にどこか屈折したものがありそれの反映である、と、私は考え始めた。私は悲しくなった。なぜそんなに屈折しているのか。正々堂々と胸を張って生きていたっていいじゃないか。そう考えはじめたのである。
捜せばもっと面白いところを見つけることができるはずなのだけれど、そんなことより僕は、伊藤礼の『狸ビール』(講談社文庫)という本が気になるので、さっそく本屋に行って捜してみようと思う。題名からして、何だか面白そうじゃないですか。